前回の記事では地球をざっくり輪切りにして考えたときに、地球は核やマントルなどの層状であるということについて扱いました。それではそれぞれの層がどうなっているのか、またその境界はどのように決まるのかについてざっくり見ていきたいと思います。
初めに地球の「内核」と「外核」がどのように違うのかについて考えていきましょう。
結論
- 固体と液体という違いがあるよ
- 何で出来ているのかも違うよ
詳しく
前回の記事において地球内部の分け方には、何で出来ているか/どれくらいカチコチなのかの2つがあることを触れました。しかしどちらの分類方法においても内核と外核は同じ場所で区別されていたと思います。これは何を意味しているのでしょうか?
これは何で出来ているのかのかは大きく異なるうえ、カチコチ具合も大きく異なるということを示しています。もうちょっと具体的に見ていきましょう。
内核 - 固体で鉄多め
内核は地球の中心部に存在する固体で鉄が比較的多いものです。正真正銘地球の中心部にあり、地球の重心もこの内核の中にあります。
外核 - 液体でニッケル多め
外核は内核の外側を取り巻く液体の層で、ニッケルが比較的多いものです。流体なのでもちろん動いています。
外核は発電機?
方位磁石を使ったことは大体の人があると思います。これは地球に地磁気、それもそれなりに安定した磁気(まあ極の向きは数十万年スケールでしょっちゅう変わったり、磁北の場所は年単位で結構変わったりしています)があるから使い物になっています。この磁力はどこで生まれているのでしょうか。
実は外核が液体であることが関係しているのです。熱い味噌汁がグルグルと対流するように、外核内でも金属がグルグルと熱対流しています。すなわち外核内では金属が動いているというわけです。そして電流が発生し、電磁誘導によって磁力が生まれます。これが繰り返されることで地磁気が生まれます。
電流が流れているため磁力が発生していることが発電機(en: dynamo)のようだということで、ダイナモ理論(dynamo theory)といいます。発生していることは発電機の逆ですが…
レーマン不連続面
では内核と外核が、なぜ分けられることが認識されたのでしょうか。上に示した「IASP91モデル」は少々古いデータですが、地球表面からの地震波速度をモデル化したものです。手抜きしてExcelで作ったら横軸が日付扱いされましたが。
地表から5100km辺りを見てみてください。ガクッと地震波の速度が変化しています。もちろんここ以外での地震波速度の変化は多数あるので、変化していること自体はそこに何かの違いがあるといった程度の情報しかもたらしません。そのためどのように変化しているかを考えます。
地球中心から(つまり右から)見たときに、P波速度はちょこっとだけ上がっています。これ自体はそこまで大したことないのですが、S波速度を見てみてください。0から3km/s程に上がっています。これはどういったことでしょうか。
P波とS波
ここでP波とS波の特性の違いについて考えてみましょう。
P波(Primary Wave)もS波(Secondary Wave)も地震動が発生した場所から発せられる弾性波であることに変わりありません。しかしP波は波の進行方向と上下方向が同じですが、S波は垂直の関係にあります。このためS波は(剛性率が極めて低い)液体中を伝わりません。船の上で観測される地震である「海震」もP波しか存在しません。
すなわち、S波を観測できているということは固体であるということを示しています。このため一つの震源から発せられている地震波を複数の場所で解析することにより、地球の内部の構造を探ることができます。
このように直接触れられない地球深部の状況は、地震波を用いて推定されることが多いです。
文献一覧
参考文献
- 佐野弘好 『基礎地質学ノート』古今書院、東京、2019年6月6日。ISBN 978-4-7722-3191-6。 NCID BB28302674。OCLC 1109731739。OL 31934583M 国立国会図書館書誌ID:029674063 全国書誌番号:23233011。
- USGS, "shadow zone", Earthquake Glossary.
引用文献
- Kennett, Brian L. N.; Engdahl, E. Robert (1991). "iasp91 velocity model". doi: 10.17611/DP/9991809. 2022年6月19日閲覧。
次回など
次回は「外核」と「マントル」の境界、またそこにあるD"層(ディー・ダブル・プライム - そう)のお話ができたらいいなと思っています。それでは~