外核とマントルの境目~グーテンベルク不連続面~

境目はええぞ~ / 2022-06-29T00:00:00.000Z

前回の記事では、内核と外核の境目である「レーマン不連続面」についてざっくり説明させていただきました。今回はそれよりもうちょっと私たちの住む地表に近い、外核とマントルの境目であるところの「グーテンベルク不連続面」について、そしてその近辺についてざっくり見ていこうと思います。

結論

  1. マントルは液体のような固体だよ
  2. 地震波が伝わらない「シャドーゾーン」と関係があるよ
  3. D"層はマントル側の層だよ

What is "mantle"?

マントルというのは地球の核をマントのように覆っている層です。「マント(フランス語: manteau)のように覆っている」というのはmantleの語源ですね。体積ベースで83%と、核・マントル・地殻と分けた時に最も多いものとなっています。では、マントルというものは外核と何が違うのでしょうか。

外核とマントルは何で出来ているのかの違いで区別されます。外核は基本的に液体の金属、特にニッケルや鉄などから構成されていると考えられています。これに対してマントルは上部と下部で化学的な構成は大きく異なるものの、酸素・マグネシウム・ケイ素などで構成されています。要するに岩石です。岩石といっても私たちが普段目にするような感じとは限らず、マントルは液体のような固体(詳しくは明日の「マントルは液体?固体?」をご覧ください)となっています。この境目を「グーテンベルク不連続面」といい、地震波の速度が大きく変化します。

シャドーゾーン

前回の記事においてはIASP91モデルを用いて、地球内部の地震波の変化を示しました。そこではS波が全く届かない層が存在しました。この領域は外核の存在を示唆していると先に示してしまったのですが、今回はその発見を追っていきましょう。

地震波は曲がって進む

前提として、地震波は地殻の中を地面を這うように進んでいくのみではなく、地球の中心方向など様々な方向へと進んでいきます。またマントルは何度も触れている通り均質なものではなく、密度や温度は場所によって大きく異なります

そして世の中には屈折という概念があります。空気中から水に光が入射したときにクイっと曲がるあれです。本質的には2つの材質中における波の進行速度が変化するために起きますが、その進行速度は密度や温度によって変化することもあります。

これでもう分かるかと思いますが、地殻-マントル中では地震波が連続的に屈折するため、凹の時のようなカーブを描いて進んでいきます。

世界で波を観測すると

地震波を観測できるのは、当然観測可能な地震波が届く範囲です。一つの震源から発せられた地震波を世界で観測しようとすると、どうやっても観測することができない観測地点があります。もちろんその観測点に不備があるということではありません。

シャドーゾーン

この観測できる/できないというのは、地球を輪切りにして考えたときにどのようなルートを通ってきたかというので決まります。色々な地震を様々な場所で観測した結果、震源から103度から143度の位置にある観測点では地震波が観測されないことが分かりました。

こういった考え方は少なくとも1906年には指摘されていました。Oldham (1906)においては地震波の観測結果に整合性を持たせるための地震波の走り方について考えられています。その後研究が進んだため、上記の図のような経路を地震波が通ってきたと考えられています。

核とマントルの狭間で。

さて、外核とマントルの組成が大きく異なり、かなりはっきり分かれるとはいえ、やはり境目には特殊な層ができます。外核とマントル境目のマントル側にはD"層(ディー・ダブル・プライム - そう)と呼ばれる層が存在します。

このD"層の厚さはわずか200kmとそこまで厚いものではありませんが、近年の研究対象の一つとなっています。マントルの対流が関係するプルームテクトニクスという考え方があり、核の近辺から地表へと向かう流れのことを「スーパーホットプルーム」と呼びます。このスーパーホットプルームの根元にD"層があるため、研究対象となっています。

他にも普段はクッソ柔らかい滑石の形で私たちは目にする「ケイ酸マグネシウム」が、ものすごい高圧にさらされた際に取るポストペロブスカイトという相も存在します。

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Writer

Osumi Akari

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