マントルの話をする際に必ず出てくるワードの一つが「橄欖岩」です。しかし橄欖岩そのものを触ったことがある人はあまりいないと思うので、ざっくりと橄欖岩とは何かを考えていきたいと思います。
結論
- 二酸化ケイ素が少なめの深成岩
- マグネシウムや鉄多め
- マントルがそのまま上がってきたり捕獲されたりして私たちの目に
特徴
火山生まれの岩石を一般に「火成岩」と言います。これをさらに大きく二つに分けると「火山岩」と「深成岩」に分けられます。この二つはどう違うかというと、
- 火山岩: 火山で作りたての岩石
- 深成岩: 深いところでじっくり熟成しながら作られた岩石
という風にざっくりと示すことができます。橄欖岩はこの二つのうち、深成岩に分類されます。
深成岩は地球の深いところでじっくり作られるため結晶構造が比較的しっかりとしています。また人間の目にきれいに映ることもあるらしく、宝石としてはペリドットと呼ばれています。
橄欖岩という名前の通り、橄欖石が非常に多く含まれています。裏を返せば橄欖石100%とは限らず、輝石を含んでいることがあります。
超塩基性(ただしアルカリというわけではない)
日常生活で酸性/アルカリ性(塩基性)と言ったとき、通常はpHで計測される水素イオン濃度について考えることが多いでしょう。高校地学の分野でも「酸性雨」といったときは「少し酸性に寄っている雨」について考えます。
しかし岩石において「酸性/塩基性」という際には注意が必要です。ここでの「酸性/塩基性」は、二酸化ケイ素がどれくらい含まれているかということを示しており、「酸性(acid)」ならば二酸化ケイ素が多く、「塩基性(basic)」なら二酸化ケイ素が少ないものとなります。
どう考えてもややこしいので二酸化ケイ素の含まれている量ではなく、苦鉄質鉱物(有色鉱物)と珪長質鉱物(無色鉱物)のバランスを用いて分類することがあります。苦鉄質鉱物が多い岩石のことを「苦鉄質岩」、反対に珪長質鉱物が多い岩石のことを「珪長質岩」というもので、非常に単純なネーミングです。二酸化ケイ素の含有量とこのバランスは結果的に似通っているので、ほぼ別称のように扱われています。
橄欖岩は二酸化ケイ素が45%以下である上に、酸化マグネシウムや酸化鉄が非常に多く含まれているため、「超塩基性岩」そして「超苦鉄質岩」に分類されます。
どうやって目にするのか
この橄欖岩はマントルの話をする際によく出てくるというお話をしました。地球を輪切りにした記事において示させていただいた通り、マントルの上に地殻があるため、マントルに主に存在する岩石を直に見ることは難しいといえます。
しかし宝石としてペリドットがあるということから、少ないながらも地上に見られる岩石であるともいえます。具体的には主に以下の二つの方法で地上にやってきます。
- 造山運動で地上に
- 捕獲岩として
造山運動によって地上に上がってくるというのは非常に直感的かと思います。地下のものが地上に向けて上がってくるというのは自然なものであるといえるでしょう。
次に捕獲岩として地上に上がってくるパターンですが、マグマがきる際に、それとは異なる質の岩石が含まれてしまうことで、異質な岩石(捕獲岩)が地上に上がってくるといったものです。このような方法で地上に来た場合、橄欖岩は丸まっている場合が多いため「橄欖岩ノジュール」とも呼ばれます。
参考文献
- 佐野弘好 『基礎地質学ノート』古今書院、東京、2019年6月6日。ISBN 978-4-7722-3191-6。 NCID BB28302674。OCLC 1109731739。OL 31934583M 国立国会図書館書誌ID:029674063 全国書誌番号:23233011。
- Chen, A. et al. (eds) (2020) ‘Ultrabasic Rocks’, in Dictionary of Geotourism. Singapore: Springer, p. 651. DOI: 10.1007/978-981-13-2538-0_263.
最後に
固体地球分野と言っておきながらほとんど岩石学/鉱物学に関する記述となってしまいました。現在、地球の中心から地上・宇宙に向けての順番で執筆を進めるため、そのうち鉱物学に関する記事が充実するとは思うのでお待ちください。
- 前回のざっくりわかる固体地球: マントルは液体?固体?
- 次回のざっくりわかる固体地球: 地殻とリソスフェア
関連リンク
- 「かんらん岩」倉崎市立自然史博物館。