「アイソスタシー」という単語を聞いたことはあるでしょうか。この記事を書いている7月にぴったりの涼しげな何か…ではないのですが、私たちが立つこの地面近くがどうなっているかを考えるときに大切になる考え方です。
ちょっと複雑になるものですが、ざっくりと見ていこうと思います。
結論
- 補償面までの重さは、上に何載っていても基本同じ
- 補償面はマントルのちょっと深いところにある
- 浮いたり沈んだりして、同じになるようバランスが
- 逆にそれぞれの層の厚さや密度を計算できることも
詳しく
結論において早速見慣れないワード「補償面」が出てきました。しかしこれは「マントルのそれなりに深いところ」という認識で問題になることはそこまで多くないでしょう。
アイソスタシーの基本的な考え方は「補償面までの重さは、上に何載っていても基本同じ」というものなので、輪切りにすれば地下6700kmまで行くこの星で一番地表から離れた場所を補償面とすると、計算するべき重さが増えてしまいます。しかしマントルの密度は水平方向では大きく変化しない(一切変化しないというわけではないけどそこまで大きくはない)ので、ある程度の深さのところで切っている、と考えてください。
本題のアイソスタシーについて戻りましょう。
概要
アイソスタシーというのは上記のようなもの全てで、補償面での重さが等しくなるという考えです。補償面までの深さを適切にとることによって、氷が乗っている分マントルまでの深さが深くなっていたり、薄い海洋地殻は海洋と合わせてもかなり軽くなっているため、マントルは地表近くに見えていたりすることが分かるかと思います。これがアイソスタシーです。
…ざっくりしすぎていますね。具体例を見ていきましょう。
バランスをとるスカンジナビア
ヨーロッパの北の方にスカンジナビア半島という半島があります。ノルウェーやスウェーデンがある場所ですね。現在でも世界地図の北の端っこにありものすごく寒そうですが、かつてはもっと寒かったので氷床が半島の上に乗っかっていました。
かつての状態は先程示したアイソスタシーの概要の真ん中の状態となります。氷床は現在では融けてしまったのでほとんどないのですが、だからといって無くなったとたんにぼよんと、真ん中の状態から左の状態へと変化したら、文字通り世界を揺るがす事態になってしまいます。
何が言いたいかというと、スカンジナビア半島はゆっくりと真ん中の状態から左の状態へと変化しているということです。現在でもスカンジナビア半島は年間数cmのスピードで隆起し続けています。ちなみにスカンジナビア半島には「フィヨルド」という氷河と海が作り出した特徴的な地形が見られます。こちらとセットで覚えてもいいかもしれません。
関連リンク
- 「No.8 アイソスタシー」新地学教室。
- 「アイソスタシー」ちがくたす。
- 「アイソスタシーをわかりやすく解説」地球科学.com。
- 澤口隆「Isostasy_Globe」。
- 澤口隆「アイソスタシーを理解するための仮想地球アプリケーションの開発」『東洋大学紀要 自然科学篇』第63巻、2019年、15-27ページ。
- 倉本圭「2. 重力と地球の形」北海道大学、地球惑星科学 I、2014年。
最後に
以上、アイソスタシーをざっくりわかるように解説させていただいたつもりです。次回はアイソスタシーの計算について細かく見ていきます。もしよろしければ、カテゴリから開ける他のざっくりわかるシリーズもご覧ください。
前回のざっくりわかる固体地球シリーズ: 日本におけるプレートテクトニクスの受容