マグマは冷えてくると分かれていく

そんなにややこしくない結晶分化作用について / 2022-07-21T00:00:00.000Z

「マグマ」と聞くととっても熱くてドロドロしたものという印象があるかもしれません。その印象は間違っていませんが、マグマというものはどこでも全く同じ一つのものではありません。

マグマの中身は様々な要因で変化しますが、その一つに温度というものがあります。

例えば水とエタノールを同時にグツグツした際、78度を超えるとエタノールが液体中にほとんど含まれなくなってしまいます。このように、温度によって物質がその液体から外に出て行ってしまうということがあります。

結晶分化作用は、マグマという液体から特定の岩石・鉱物が固体となってしまうことによって、マグマの中身が変化してしまう作用のことです。先程の水とエタノールでは温度が上がることによりエタノールが外へと出て行ってしまいましたが、結晶分化作用はその逆で、温度が下がることにより、特定の岩石・鉱物が固体となることにより外へと出ていきます。

では、ざっくり見ていきましょう。

結論

  1. マグマの中身は温度が下がると変化する
  2. 玄武岩質マグマから流紋岩質マグマへ

詳しく

マグマの結晶分化作用の概要

この図は結晶分化作用の概要を示したものです。しかしながら少し複雑なので、一度に全部覚えようとせずに順を追いつつ理解しましょう。

この図においては省略していますが、何かが外に出ていく前のマグマのことを「本源マグマ」といいます。厳密に言えば異なりますが、このサイトを参考にしていいくらいの物では実質的に玄武岩質マグマと考えていいでしょう。本源マグマは、温泉街のお土産みたいな名前をしていますがちゃんとした学術用語です。何度も繰り返しますが、ここから温度が下がるにつれて色々なものがマグマの外に出ていき、マグマの構成が変化していきます。

玄武岩質から安山岩質

マグマの温度が1200℃くらいになると、玄武岩質マグマから、橄欖石や輝石などの鉱物が固体となってマグマから抜けていきます。また無色鉱物の一つである「斜長石」はこの温度を下回ると800度くらいになるまで抜けていきますが、玄武岩質から安山岩質マグマへと移り変わる時においてはカルシウムが多いものとなります。

安山岩質からデイサイト質

橄欖石や輝石などが晶出したことにより二酸化ケイ素濃度が上がったマグマは、さらに温度が下がるとデイサイト質マグマとなっていきます。

この辺りでは角閃石が晶出するようになり、また斜長石もカルシウムが減っていく代わりにナトリウムが増えていきます。

デイサイト質とは

デイサイトは日本語で「石英安山岩」とも呼ばれるもので、流紋岩の中でも安山岩寄りと言われているものです。簡単のためここでは名前だけの登場にしましたが、この辺でマグマの温度は1000度くらいになっています。

デイサイト質から流紋岩質

さらに温度が900度や800度と下がっていくと、角閃石に加え黒雲母が晶出するようになります。また石英やカリ長石といった鉱物もマグマから抜けていきます。ここの特徴としてはここまでマグマに残り続けてきたものが多い水・ケイ素・カリウムがメインのマグマとなります。

さらに温度が下がっていくと、ペグマタイト質マグマを通って、もはや熱水となります。

参考文献

  • 藤野滋弘、上松佐知子、池端慶、黒澤正紀、丸岡照幸、八木勇治編「改訂版 地球進化学」『地球学シリーズ』2、2020年、国立国会図書館書誌ID: 030248778、Open Library: OL38631320M、OCLC: 1145733096、NCID: BB29850890、ISBN: 978-4-772-25331-4。

関連リンク

最後に

以上ざっくりですが、結晶分化作用について説明させていただきました。次回ではこの結晶分化作用の裏に隠れている「ボーエンの反応系列」と「ゴールディッチの風化反応系列」についてざっくり説明していこうかと思います。

Writer

Osumi Akari