結晶分化作用について説明した前回の記事では、どのように分化していくかという話がメインでしたが、この記事では主に「反応系列」と呼ばれるものを扱っていきたいと思います。
ボーエンの反応系列
ここに上げた図は前回も示したものですが、斜長石は玄武岩質マグマから流紋岩質マグマに至るまで、その内実は変化しながらも連続的に晶出していっています。しかしそれ以外の橄欖石や角閃石などの有色鉱物は、段階的にとある温度になったら晶出していると言えます。
マグマの温度 | 有色鉱物 | 有色寄り | 真ん中 | 無色寄り | 無色鉱物 |
---|---|---|---|---|---|
1200度 | 橄欖石 | 輝石 | 斜長石 | ||
1000度 | 角閃石 | 斜長石 | |||
800度 | 黒雲母 | カリ長石 | 斜長石 | 石英 |
これを表にざっくりとまとめるとこんな感じですね。Markdownの表の書きづらさにイライラしながら書きました。このV字型の晶出について論じたものが「ボーエンの反応系列(Bowen reaction series)」です。これは1928年という極めて早い時期に提唱されたもので、現在でもある程度受け入れられています。
化学構造的にみると、橄欖岩はネソケイ酸塩と呼ばれる、あまり構造化されていないものですが、輝石はイノケイ酸塩(一重の鎖)、角閃石は同じイノケイ酸塩でも二重鎖となり、黒雲母ではフィロケイ酸塩となります。ちなみに斜長石の構造は大きく変化せず、ずっとテクトケイ酸塩となっており、その内部のナトリウムとカルシウムの構成比が変化していくものとなっています。
ゴールディッチの風化反応系列
「風化」という概念があります。これはざっくりわかる地球科学シリーズがもっと書き進められ堆積について扱うときに詳しく説明しようとは思いますが、ざっくり言えば「風や水に削られたり、化学的に溶かされたりすることなどで、岩石が細かくなっていくこと」です。
風化のされ具合というのは当然環境によって大きく左右されるのですが、風化される岩石がどのような鉱物で形成されているのかという点があります。鉱物によって風化されやすいかそれともされづらいかというのは「風化抵抗度」という相対的な指標で表されます。そしてその風化抵抗度というのは、ボーエンの反応系列で早く晶出するものほど抵抗度が小さい(==風化されやすい)という風になっています。
この概念は1938年にゴールディッチの風化反応系列(Goldich dissolution series)として示されたものです。
参考文献
- Bowen, Norman Levi "The evolution of the igneous rocks" Princeton University Press, 1928, Internet Archive: evolutionofigneo00bowe, Open Library: OL6727658M), NCID: BA02419861, LCCN: 29009945.
- Goldich, S.S., 1938. A Study in Rock-Weathering. The Journal of Geology 46, 17–58. JSTOR: 30079586, DOI: 10.1086/624619
- 藤野滋弘、上松佐知子、池端慶、黒澤正紀、丸岡照幸、八木勇治編「改訂版 地球進化学」『地球学シリーズ』2、2020年、国立国会図書館書誌ID: 030248778、Open Library: OL38631320M、OCLC: 1145733096、NCID: BB29850890、ISBN: 978-4-772-25331-4。
- 佐野弘好 『基礎地質学ノート』古今書院、東京、2019年6月6日。ISBN 978-4-7722-3191-6。 NCID BB28302674。OCLC 1109731739。OL 31934583M 国立国会図書館書誌ID:029674063 全国書誌番号:23233011。
最後に
以上簡単に、(歴史的に見ると逆ともとらえられますが)結晶分化作用の裏側に隠れている二つの反応系列の話をさせていただきました。結晶分化作用のより深い理解につながってくだされば幸いです。