3日前に「なぜプレートは沈み込むのか」について説明させていただきましたが、今回は沈み込んだプレートが影響する沈み込み帯でのマグマの生成について簡単に書かせていただきたいと思います。
要するに前回の記事の3つ目「水を加えてゴールを動かす」について詳しく説明する記事です。日刊の体を維持するには間に合わないからという理由で分かりやすい水増しをしていますね。水増しなので、前回の記事を読んでから読まれることを強くおすすめします。
結論
- 水が加わると地温勾配と交わることがある
- 沈み込んだプレートからお水が供給される
詳しく
前回の冒頭で出てきた意味ありげな点線が入っている図をもう一度見ておきましょう。
今回の話で重要になってくるのが、3本生えている紅茶色の橄欖岩が融ける温度を示した線のうち、一番左にある点線です。前回の記事では「温度が~」「圧力が~」と言いましたが、要するに紅茶色の線を越えた状態になればマグマは生成されるということです。そしてその紅茶色の線は環境によって変化しうるのでわざわざ3本生やしているのですが、今回重要な一番左の線は「加水された際の橄欖岩の融解曲線」です。要するに「水がある時限定の融ける温度を示した線」です。
よく見ると、この線と赤青線で示している地温の変化が交わっている場所があるかと思います。この交わっている場所より下(地温がずっと融解曲線よりも高い状態)の場所では、水があるという条件さえ満たせばマグマが勝手に出来ます。しかし、そんな都合よく水が供給されるなんてことはあるのでしょうか。
沈み込みと水
答えから言えば、都合よく水が供給されることはあります。それはプレートが沈み込んでいく際に水を地下深くへと持っていくため、沈み込んでいくプレートからは水が供給されるというものです。
プレートは海中でわずか(とはいえ面積を考えれば膨大な量)な海水を自らの中へと取り込みます。一旦沈み込んで海水の供給がなくなったらば、反対に外へと水を供給し始めます。
そして先程の地温がずっと融解曲線よりも高い状態の場所へと水を含んだプレートがたどり着いた際、マグマが発生します。もちろんこの供給は連続的に行われるため、マグマが大量に形成されます。マグマが大量に供給されるということは火山活動が活発になると、ざっくり言えますので、「地温がずっと融解曲線よりも高い状態になり始める深さ」の真上では盛んに火山活動が行われるといえることが分かると思います。このため、日本などのプレートが沈み込む場所の外縁には「火山フロント」と呼ばれる、帯状の火山活動が非常に活発な箇所が形成されます。詳しくは次回の記事で扱おうかと思います。
関連文献
- 巽好幸「沈み込み帯における玄武岩質マグマの発生」『地学雑誌』第97巻3号、1988年、178-183ページ、NAID: 10025676021、DOI: 10.5026/jgeography.97.3_178。
- 栗谷豪「水とマグマ」『地学雑誌』第116号1号、2007年、133-153ページ、NAID: 130000801790、DOI: 10.5026/jgeography.116.133。
- Kawamoto, T., Yoshikawa, M., Kumagai, Y., Mirabueno, Ma.H.T., Okuno, M., Kobayashi, T., 2013. Mantle wedge infiltrated with saline fluids from dehydration and decarbonation of subducting slab. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 110, 9663–9668. DOI: 10.1073/pnas.1302040110
関連リンク
- 「マグマのでき方2:沈み込み帯のマグマ」大鹿村中央構造線博物館。
- 「海の水は、あと6億年でなくなりそうな勢いで地球に吸い込まれている」サイエンスポータル。
最後に
以上2回にわたってマグマの形成方法についてざっくりと説明させていただきました。このマグマの発生機構、実は結構複雑だったりするので結構切り落としてしまった箇所が存在します。そのため理解が少し難しくなってしまっている部分はありますが、それでも何かしらの参考になれば幸いです。