前回の水増し記事では、プレートがある程度沈み込んでいる場所では勝手にマグマが発生するというお話をさせていただきました。そして勝手にマグマが発生し始める場所は大体同じ深さという話から、火山フロントという火山活動が活発に行われる帯状のエリアが存在するということを示させていただきました。
そういうわけで、今回はその火山フロントについてざっくり説明していこうかと思います。
結論
- 沈み込んでいるところからちょっと離れたところに火山フロント
- 日本だと主に東北日本と西南日本の西寄り
- 余談: 火山帯と火山フロント、混同しがち
ちょっと離れたところに
話を進めるのが楽なので、最初から日本の話をしていこうかと思います。
前提
かつてプレートテクトニクスについて扱った記事において、日本の周囲には4枚のプレートが存在すると説明しました。配置は以下の画像のような感じです。
そしてプレートは沈み込みうる(全てのプレートが沈み込むというわけではない)という話も軽くしました。多分こんなタイトルの記事にたどり着いている方は日本のプレートの配置についてそれなりに知っているとは思うので発問しますが、この画像においてプレートが沈み込む場所はどこか確認してみましょう。
それは、大陸プレート同士であるユーラシアプレートと北アメリカプレートの境界線以外の全てです。意外に忘れられがちですが、フィリピン海プレートと太平洋プレートの間でも、太平洋プレートの沈み込みが発生しています。
また、前回の記事において、マグマはプレートが地下へと持ち込んだ水によって橄欖岩が融ける温度のゴールが変化し、水がある状態での橄欖岩の融ける温度の曲線と地温の勾配が交わっている場所より下では、ずっとマグマが生成されるというお話もさせていただきました。
ここから、沈み込んでいる場所からちょっと離れたところには、線状・帯状の火山活動が活発に行われる場所が存在するといえます。これが今回扱う「火山フロント(火山前線)」や「火山帯」という考え方です。
前提が分かればそんなに難しくない
以上の前提が分かれば、火山フロントの理解はそこまで難しくはないでしょう。反対に、前提の理解が怪しければ、火山フロントの理解はちょっと難しいものになるかもしれません。そのため理解が怪しい場合はリンクを押して、周辺知識の習得を行うことをおすすめします。
…と書いたので、前提が理解されている前提で話を進めていこうかと思います。 (楽だし)
先程の前提から、プレートが沈み込んである程度の深さにたどり着いたら一斉にマグマが発生するということが分かると思います。つまり、プレートとほぼ平行に火山活動が活発に行われるものが帯状に形成されます。これによって形成される一群の帯状の火山の集まりを一般に「火山帯(volcanic belt)」、もっと細かく見る場合は「火山列」と言います。
そして、プレートの沈み込んでいる場所から近い火山同士をつなぐと線になることが分かるかと思います。この線のことを「火山フロント・火山前線」と言います。そのため沈み込みによって発生している火山帯に存在している火山は、基本的に火山フロントの沈み込んでいる場所の反対側サイドに存在しているといえます。
火山フロントと火山帯
一応火山フロント(火山前線)という言葉の定義として、
日本列島をはじめとする島弧―海溝系の火山帯において,最も海溝寄りに位置する火山同士を結んだ線。 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典「火山フロント」より
というものがあります。つまり火山フロントは火山前線という別名の通り線であるということです。
これに対応して、日本には東日本火山帯と西日本火山帯という主に2つの火山帯が存在すると考えられており、火山帯は帯です。私も書いていて若干混乱してしまったのですが、火山フロントは線であるため、「火山フロントの大陸側に火山が集中している」という表現が正しかったりします。
関連リンク
- 「火山噴火の仕組み」気象庁。
最後に
画像を用いて嵩増ししているように見えるかもしれませんが、一応必要な画像のみに絞ったつもりです。
火山フロント/火山帯の考え方は、日本が「火山大国」と呼ばれる所以に関わるものです。逆に考えると、ここまで理解できれば、基本的な「なぜ日本には火山が多いのか」ということに関する認識はそれなりにあると言えるかと思います。
この疑問に答えたいと思う人がどれくらいいるかは分かりませんが、そういった方の理解に役立てば幸いです。