火山そのものよりも火山から飛び出してきて積もっていったものについて考えることも多々あります。それに関連するワードの一つとして「広域テフラ」というというものがあります。
今回は単なる「テフラ」との違いなどについてざっくり解説していこうかと思います。
結論
- 一度の噴火で(大量に)出てきて降り積もったもの
- イベントで出来るのでその層は時間を示すものに
単なるテフラとの違い
「テフラ」という言葉は前回の記事でもざっくり説明させていただきましたが、一言で表わすのならば「火山活動生まれの砕屑物」が波風立たないものだとは思います。このテフラと広域テフラはどのような違いがあるのでしょうか。
広域テフラというのは、「広域に散らばったテフラ」と捉えるのが一番良いでしょう。つまり、1つの場所から1度の火山活動で大量にテフラがばらまかれ、逆に言えば色々な場所にある地層から同じタイミングで放たれたテフラが見つかるということです。
時間を示す広域テフラ
1つのイベントによって広範囲へ同じ特徴を持ったテフラがバラまかれるということは、地層からその特徴を持つテフラが見つかった場合、そのイベントのタイミングでそのテフラが降り積もったことを意味します。
イベントのタイミングの具体的な年が分からなくとも、地層は基本的には下から上へと堆積すること(地層累重の法則)から、その層を基準として堆積の前後を判断することが出来ます。もちろん具体的なタイミングが様々な要素から明らかになった場合は、よりその前後を詳細に判断することが可能となります。
広域テフラとして有名なものとしてカルデラの件で触れさせていただいた阿蘇山から放たれた「Aso-4」と呼ばれるものがあります。このAso-4というのは約9万年前に発生した噴火によって放たれた広域テフラのことを指し、遠く関東の層にまで含まれていることがあります。分布についてはWikimedia Commonsにいい感じの画像が載っているので、そちらをご参照ください。
ちなみにAso-4といった際にこの時発生した噴火やそれに起因する火砕流堆積物を指す場合もあります。そのため文脈次第というところも多いので、その点についてはちょっと注意がいるかもしれません(が、現実問題になるかというとそんなことは無い)。
他の場所の地層と比較することが便利な層のことを「鍵層」と言ったりしますが、やはり広域テフラは便利なことから鍵層の代表例の1つとなっています。
関連リンク
- 西澤文勝「広域テフラについて」『自然科学のとびら』第26巻1号、2020年5月、6-7ページ。
- 「阿蘇について」阿蘇火山博物館
- 「Aso-4火砕流堆積物」阿蘇ジオパーク推進室。
最後に
次回のざっくりわかる火山シリーズ: ファイバーしている「ペレーの毛」
この辺りからは堆積システムと絡んでくるのでどうしても触れないといけない事柄が増えてしまうことから、なかなか執筆が進まない要因の1つとなってしまっています。先日はストックが8本ありましたが、これを書いているのは8月18日であることからちょっときつくなってしまっています。
今後も可能な限りストックは貯めていこうかとは思っていますが、どこかで途切れてしまうかもしれません。