熱くて冷えた火山弾

溶岩から分離したシリーズ第n弾 / 2022-09-05T00:00:00.000Z

「雨ニモマケズ 風ニモマケズ 雪ニモ夏ノ暑サニモマケヌ 丈夫ナカラダヲモチ 慾ハナク 決シテ瞋ラズ イツモシヅカニワラッテヰル」

このような書き出しで知られている「雨ニモマケズ」を残した宮沢賢治さんという方がいらっしゃいます。一般的にはこの「雨ニモマケズ」や「銀河鉄道の夜」、「注文の多い料理店」で知られていますが、彼はその作品内に地学に関連するワードを散りばめていることが多く、地学徒として「地学を扱った作品」を鑑賞したい際におすすめ出来る作品がいくつかあります。

その1つに「気のいい火山弾」という作品があります。短いお話なのでリンク先の青空文庫から一度読まれることをおすすめしますが、大まかに言えば大きくかつやさしい火山弾である「ベゴ」が周りの石から(気分が悪くなるレベルの)罵詈雑言を飛ばされながらもそれを受け流し続け、ある日やってきた人間に「実にいい標本」だとしてベゴが「東京帝国大学校地質学教室」へと持っていかれる、といったお話です。

というわけでこの「ベゴ」の正体である火山弾がどのようなものかについてざっくり説明していこうかと思います。

結論

  1. 引きちぎられたマグマ
  2. 色々な形状

第n回溶岩生まれシリーズ

火山砕屑物(テフラ)よりももうちょっと広い火山生まれのもののカテゴリとして「火山噴出物」というものがあります。この火山噴出物は名前の通り火山活動によって噴き出たものの総称です。火山噴出物のうち火山砕屑物に含まれないものとして代表的なものとして、溶岩から作り出された諸々があります。ペレーの毛ペレーの涙がその代表例です。

このようなものとしてよく知られているものが今回紹介する「火山弾」です。

火山弾というのはマグマ噴火で噴き出てきた溶岩が空中へと放たれたときに形成されるいわば「溶岩の塊」です。テフラとして見る場合も無くはないので一応書いておきますが、基本的な火山岩塊に含まれるサイズのものを火山弾といいます。

つまりある程度デカめの溶岩の塊ということです。この溶岩の塊であるところの火山弾は空中に放たれたときには基本的に液体です。つまり空中でゴロゴロ回ったり着地した後冷えたりすることで様々な形状を取るということです。様々な形状がありますが、ここでは代表的な紡錘状火山弾とパン皮状火山弾を紹介したいと思います。

紡錘とパン皮と

というわけで半分寝ながら書いていることから日本語がめちゃくちゃ(いつもか?)かと思いますが、紡錘状火山弾とパン皮状火山弾について書いていこうかと思います。

紡錘

紡錘(ぼうすい)とは何でしょうか。

ナウでヤングな私には分からなかったことにさせてほしいのですが、要するに糸を紡ぎ巻き取るための道具だそうです。この形状が細長くかつ両端が中心と比較して細いことから、同じような形状を持つものに対して「紡錘状○○」という呼称を付けることがあるそうです。個人的にはどう見てもサツマイモにしか見えないので「サツマイモ状火山弾」といった方がいいと思っています。

このサツマイモにしか見えない紡錘状火山弾というのは、空中でグルグルすることによって形成されると言われています。空中でグルグルされている間に、失敗したピザのようにどこかの軸で伸びたことによって紡錘状になったということですね。そのため紡錘状火山弾には縦に切れ目のようなものが見られる場合があり、回転軸を考える際のヒントになることがあったりします。

パン皮

パンを食べたことはありますでしょうか。私はご飯とうどんとラーメンが好きなのであまりありませんが、友人に聞いたところ80歳で亡くなってしまう大半の方が召し上がられているそうです。

火山弾の一種には「パン皮状火山弾」というものがあるので見比べてみましょう。

パン皮状火山弾とパン

パン皮状火山弾の画像はLassenNPSのパブリックドメイン画像、パンの画像はオーストリアのAlmtalという町のパン屋さんで出てくるものをIsiwalさんが撮影したCC BY-SA 4.0の画像を使用させていただきました。MEGAにpptxファイルを上げておいたので、要らないと思いますがライセンスに則りご自由にお使いください。

ライセンス関係の話は置いておいて、パン皮に似ているでしょうか。個人的には玉ねぎ状風化の方が名前の由来に似ていると思っていますが、パン皮以外の用語が思いつかないので取り敢えず「パン皮」の語を使っていこうと思います。

このパン皮状火山弾は、比較的ゆっくり冷えた傾向にある火山弾です。基本的に熱い物は外から冷えていくのですが、外側がガッチガチに固体になってしまったのに対し内側はまだトロトロの液体であることがあります。この時、中身の液体の溶岩が冷えてくるに従って液体の中からガスが出てくることがあります。このガスが外へ行こうとして、もう既に固まってしまった外側をどうにかして突破します。そのため、外側が画像に占めさせていただいた通りバッキバキになるため、このような見た目のパン皮状火山弾が形成されます。

最後に

一応このサイトに掲載されているコンテンツの質にはある程度気を使っているので、書き始める前に「気のいい火山弾」に関する研究をCiNiiで調べたところ、仏教思想との関連性を指摘する紀要がオンラインで読めるものとして出てきただけなので参考文献をあまり参照せずに書く羽目になりました。そのためほとんど導入だけでベゴ石の話は終わってしまってしまいました。宮沢賢治さんに申し訳ない。

Writer

Osumi Akari

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