「avalanche」という英単語をご存知でしょうか。この英単語の意味は「崩壊」という意味です。(ちなみに英検1級レベルらしい。マジかよ。)
それでは「debris avalanche」を日本語で表すとどのようになるでしょうか。文科省の学術用語集を参照すると「土石流」となりますが、この英語が用いられるときは基本的にそれなりの規模を持つ土石流といった意味合いを含みます。そのため常に「土石流」と訳すことは問題ないとはいえ誤解を生む可能性が微粒子レベルで存在します。今回はそれなりの規模を持つ土石流である「岩屑なだれ」についてざっくり書いていこうかと思います。
ちなみに「土石流」や「火砕流」に流されて「ながれ」と書いてしまいがちですが、雪がガーッと崩れる方の「なだれ(雪崩)」なので、その点は注意してほしいなと思います。なぜならプレビューしている最中に「何かおかしい」と思ったらタイトル部分だけ「岩屑ながれ」と書いてしまっていたことに気づいたんですよね。悲しい。
結論
- 一部が崩れる
- それなりに土砂が流れ込む
崩れる
実は前回の山体崩壊の一局面という印象が強い現象が岩屑なだれです。そのためあまり書くことは無いのですが記事の下書きを作ってしまったので頑張って書こうかと思います。
「火山フロント」と「火山帯」のように、私も書いていて混乱してくるので違いを書いておくと、
- 山体崩壊: 山の形が崩れること
- 岩屑なだれ: 大量の土砂がながれる流動性の高い流れ
という感じでしょうか。山体崩壊は岩屑なだれの前段であると捉えることも出来なくはないですが、定義をはっきりさせたい場合にはあまりお勧めできないかなという感じです。
とはいえ岩屑なだれが起きるような状況はほとんど山体崩壊が起こっているので、崩れる原因は山体崩壊と同じく、
- 火山性地震の頻発
- 火山灰の堆積による不安定化
- 激しい風化を受けたことによる不安定化
といったものが挙げられます。
流れる
原因がほとんど山体崩壊なので書くことがびっくりするほどありませんでしたね。自分で書いていてびっくりしています。そのためこの記事ではその流れの性質についてそれなりにざっくりと触れていきたいかと思います。
さて岩屑なだれという語を分解してみると「岩屑 + なだれ」となります。それぞれの意味について考えていきましょう。
初めに「岩屑」というものは、「岩」とこれまでに何回も触れている「砕屑物」の「屑(せつ)」を組み合わせたものですね。つまり大きなものから小さなものまで、といった感じですかね。
次に「なだれ」について考えていきましょう。冒頭に書かせていただいた通りこれは「流れ」の誤記ではなく「雪崩」を意味しています。説明するまでもないとは思いますが、積もった雪が何らかの理由で斜面を流れ落ちる現象という意味での「雪崩」です。なぜ「流れ」ではなく「雪崩」という語を使用しているのでしょうか。
何気に私も考えたことがなかったのでちょっと調べてみたのですが、岩屑なだれは基本的に空気や水蒸気が含まれている流れであることから「雪崩」という用語が使用されているという可能性が出てきました。もちろん由来が明確に書かれているわけではないのですが、ちょっと納得してしまいました。火砕サージと比較すれば低速であるともいえますが、それでも人間にとっては十分危険な速度と規模のものなので、基本的には逃げたほうがいいかなとは思います。(この終わり方、何回か使いまわしている気がする)
参考文献
- 飯澤功、酒井敏、須田恵理子、齋藤武士、鎌田浩毅「粉体層上の動摩擦係数測定実験とその流体力学的考察」1999年。
- 鎌田浩毅、須田恵理子、齋藤武士、飯澤功、酒井敏「火山体崩壊に伴う岩屑なだれの流動メカニズムの実験的解析と地質堆積物への適用」『材料』第51巻2号、2002年、168-175ページ、ISSN: 1880-7488、DOI: 10.2472/jsms.51.168。
関連リンク
- Debris Avalanche - ScienceDirect Topics
- 「岩屑なだれについて」地質の解説。
- 「岩屑なだれ」コトバンク。
最後に
次回のざっくりわかる火山シリーズ: 岩石が料理される変成作用
平仮名でゲシュタルト現象を起こすとは、思わなかったよ9月5日。
それはそうと基本的にこのサイトは3日分の記事をその期間の前日に当たる日で一度にプッシュしているのですが、7日分の山体崩壊の記事がまともに書きあがらなかったせいで6日分の記事を6日当日に出してしまうという失態を犯してしまいました。ストック足りなさすぎ…