先日私は「かながわの大地」という神奈川県立生命の星・地球博物館で行われていた特別展を見に行きました。小田原から少し行ったところにあるその博物館で私は「地図の最前線」という特別展のポスターを発見しました。横浜にある神奈川県立歴史博物館で行われているらしいですけどね。
どう考えても一日の昼間に気づきかつそこから移動してゆっくり見ることは不可能なので、かながわの大地へ行った日には諦めたのですが、どう考えても面白そうな展示です。なので日を改めて行きました。多分かながわの大地のレポと同じく、語彙力の無い地学徒がパシャパシャ飛び跳ねているだけの記事になるかとは思いますがご了承ください。
写真は非営利での撮影のみ許可されていました。また画像の公開について責任を取らない旨が明記されていました。そのため明らかにパブリックドメインのような地図についても掲載を見送らせていただきました。インターネット経由で閲覧可能な画像については適宜リンクを入れていますので、パシャパシャ跳ねる文章と併せてご覧ください。
結論
- 最高
- 人間の営みを表わす二次元。時と人が紡ぐさらなる次元。
- 最高
取り敢えず
神奈川県の公式YouTubeチャンネルに担当学芸員の方による解説がアップロードされています。まともな解説を見たい方はそちらを参照してください。
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というわけで安心して語彙力を低下させることが出来ます。
展示品
かなりの量の展示品があり充実しすぎていたので、特に心が動いたものを載せていこうかなと思います。
ちょーかんず、おーきぃー!
あのねあのね、にゅーかんりょーをはらってなかへはいったら、どーんとね。ほんとーにどーんとね、おーきぃーちょーかんずがあったのー!
画像: 神奈川県鳥瞰図
さすがに語彙力を下げすぎていくら2時に書いているとはいえこっちが恥ずかしくなってくるような文章になってしまったので元に戻すのですが、入り口にデカデカと富士ゼロックスによる「神奈川県鳥瞰図」の複製が置いてありました。実寸大です。元の鳥瞰図もデカすぎるのですが、それよりもその複製力に驚かされました。
鳥観図/鳥瞰図というものは「鳥が空から観るような図」という説明が一番楽で分かりやすいと思っています。が、それ以外に大きな要素は単純に3D視点で描いた地図かというとちょっと怪しいという点だと思っています。
ざっくりわかる地学シリーズを書いているような人からすると地図は正確じゃないと困る(少なくとも誤差が許容できる範囲でないと困る)のですが、鳥瞰図は正確性とはかけ離れているんです。とはいえ位置関係の把握には使えますし、芸術作品として鑑賞するととても面白いものとなっているとは思います。「かながわの大地」と比較すれば一般の方に向いている特別展なので、こういった芸術チックな「地図」もあったのでその観点からも書いていけたらなと思います。
御開港横浜之全図
そういった鳥瞰図の一つに「御開港横浜之全図」というものがあります。名前の通り開港した横浜中心部の姿が描かれている鳥瞰図なのですが、この鳥瞰図には「増補改訂版」があります。つまりほとんど同じ視点で異なる時の横浜中心部が描かれているものということです。
展示としては横並びで置いてあり、1859年から1866年というわずか7年の間でより盛んになった街を見ることが出来ました。写真が出せないので微妙なのですが、「寒村をどうにか仕立てた」という感じの町から「それなりに発展している」といった感じの町となっていました。
スクライブ版
現在の地図は基本的にコンピューター上で製作されていますが、かつてはそうではありませんでした。印刷技術の発展とともにその形態は変化し、手書きから木版、銅版、プラスチック版、レーザー印刷と様々に移り変わっていきました。
この特別展では当然ながらそういった点にフォーカスがかなり当てられていたのですが、プラスチック版を活用した多色印刷であるスクライブ製版についてそれなりに詳しく触れられていました。正直私は印刷史についてそこまで詳しいわけではないので知らなかったのですが、銅版製作の負担を軽減するためにプラスチック板を溶かして印刷するべき部分を作るといった原版の作成手法が戦後導入され、電子化される前まで盛んに用いられていたようです。
地形図「佐野」の製作に用いられたスクライブ版の実物が展示してあり、地形・川・道などに分かれたプラスチック製の板が複数存在しました。実際に印刷を行う際には銅版を用いた多色印刷同様にそれらの位置を合わせて、重ねる形で印刷を行うそうです。
写真が載せられないことから説明することは難しいので、以下の文献でスクライブ製版についての理解を深めていただければ幸いです。
- 片江勲「スクライビングによる地図製図法」『地図』1963年第1巻1号、56-59ページ、NAID: 130003812860、DOI: 10.11212/jjca1963.1.56。
常設展示
せっかく遠出したので常設展示を見に行きました。写真が使えないがために表現を工夫しようとかなり逡巡したのでもう体力がないことから一つだけ面白かったものを紹介してこの記事を終わろうかと思います。
地層の剝ぎ取り自体は私も多数見たことあるのですが、この人工感があまりにあふれている剝ぎ取りは初めて見ました。私が0.01Ma以下レベルの層に目があまり行っていないだけの可能性は多々ありますが。
この剝ぎ取り標本には「狩猟用断面の土層剝ぎ取り」というタイトルが付けられています。すなわち動物をこの穴に追い込むために作られたと考えられているとのことです。この標本の採取地が崖の上の際にあり、そこの近辺に住んでいた人々が動物を効率的に採るために掘ったという解釈がなされています。実際にこの穴は一つだけではなく、崖線に沿って複数個同様の穴の跡が確認されているとのことです。
個人的にはあまり納得してはいませんが、面白い解釈だなと思いました。
関連リンク
最後に
- 前回のジオ関係の記事: 明治時代の地学の教科書を読んでみる
- 前回のおでかけ: 特別展「かながわの大地」を見に行った
というわけで写真を掲載することは難しかったため文章メインになってしまいましたが、特別展「地図の最前線」に行ってきたよ~という記事でした。この特別展のコンセプトが入り口に書いてあったのですが、「本展では、地図を『人類が世界を捉え、ある一定のルールに従って表現したもの』とする。」「これらの地図は(中略)各時代の最先端技術によって生み出されたものである。」というエモエモなものでした。
このコンセプトに裏打ちされた普通に感動したし楽しかったので、皆さんも行ってみてくださいね。