この記事へとたどり着いた大半のご家庭に電子レンジが存在すると勝手に思っているのですが、電子レンジの機能を極度に抽象化すると「温める」という機能が残るかと思います。また一部のご家庭には圧力鍋という料理が楽になりそうな響きがある商品があるかとは思いますが、この商品の機能をまたそれなりに抽象化するのならば「内部の圧力を上げる」すなわち「内部に入れたものに圧力をかける」といった機能があると言えます。
このような機能が地球内部にあり、食材ではなく岩石が温められたり圧力をかけられたりするという作用(変成作用)についてざっくりと解説していこうと思います。
結論
- レンチンと圧力鍋
- 圧力が高い==より深い場所で起きる
- みんな大好き変成岩
レンチンと圧力(物理)
ふざけたような前文失礼しました。しかしながら人に説明するのにはこれが一番楽なんですよね。加熱と圧力の最も身近な例ですしね。とはいっても地球内部の機構は電子レンジや圧力鍋とは大きく異なりますので、割と丁寧に触れていこうかなと思います。まあ岩石がマイクロ波で加熱されたり、蒸気を閉じ込めて味(?)をしみこませていたりするということが地球内部で本当に起こっていると思う人の方が少ないかとは思いますが。
熱
地球内部で岩石が加熱すること時に問題になることはその熱源でしょう。別に地下数十kmの場所に都市ガス管が通っているわけではありませんし、当然ながら太陽光が差し込むというわけではありません。地中にある熱源と言えばマントルなどに代表される「地球誕生時の熱の残り」が第一に挙げられます。地球を輪切りにした記事で流動性での分類の話をしているのですが、流動性が存在するレベルで温められるほどの熱源があるということが直接的ではないものの理解していただいたのではないかと思います。ちなみに地中に存在する放射能による加熱というのもごくわずかながら発生しており、ガボンに所在するウラン鉱床では「オクロの天然原子炉」といった天然の原子炉が生まれるような場所も存在しています。
このような熱源によって温められることがあるのですが、当然ながら熱源に近づかなければ加熱されません。10m先にガスコンロがあったとしても全くと言っていいほど温まりませんが、1cmまで近づけば明らかにやけどをするでしょう。多分そんな感じです。熱源に近づく方法としては二つあり、熱源の方がこっちに来るパターンと、自分が熱源の方へ向かっていくパターンが存在します。これを地球に当てはめると、
- マグマが上がってきて、そこにあった岩石が温められる
- プレートの動きにドンブラコされて、岩石が深いところに連れていかれて温められる
と言えます。割とふざけている文章にしか見えないと思いますが実はこれが変成作用の代表的な2パターンです。
圧力
ここで割り込むようで大変申し訳ないのですが、次の説明が楽になるのでここで圧力の説明をさせてください。熱源であるところのマグマは向こうから近づいてきました。しかしながら圧力は向こうの方からはあまり近づいて来ません。当たり前と言えば当たり前なのですけど。そして当たり前なのですが、地表からどんどん潜っていくと圧力がどんどん高くなっていきます。地球を輪切りにした記事で触れさせていただいた「コラ半島超深度掘削坑」が12kmで止まってしまった理由の一つに強すぎる圧力というものがあります。
すなわち基本的には純粋に地表からより深いところに行けば行くほど圧力が強くなるということです。この後圧力の話が絡んできますが、基本的には圧力が高くなればなるほど深い場所で係る変成作用が行われていると言って良いでしょう。
代表2パターン
さて先程の2パターンがどのような場所で行われているかを圧力の観点も含めて見ていこうかなと思います。先程のものをもう一度掲載すると
- マグマが上がってきて、そこにあった岩石が温められる
- プレートの動きにドンブラコされて、岩石が深いところに連れていかれて温められる
という風になります。この2つがどのような場所で行われているかもセットで考えていただくと、
- マグマが上がってきて、そこにあった岩石が 浅いところで 温められる
- プレートの動きにドンブラコされて、岩石が 深いところで 温められる
と言えます。皆さんは4段落くらい上で圧力の観点を持っていることからこれをさらに言い換えると、
- マグマが上がってきて、そこにあった岩石が 低い圧力の中 温められる
- プレートの動きにドンブラコされて、岩石が 高い圧力の中 温められる
と言えます。これを簡単にもうちょっとカッコよく言うためにはどうしたらいいのかをちょっと考えてみると、漢語を使うといい感じになることが思いつくのではないかと思います。別にカッコよくするためのものではないのですけど。
- マグマが上がってきて、そこにあった岩石が 高温低圧で 温められる
- プレートの動きにドンブラコされて、岩石が 低温高圧で 温められる
さてここでプレートの動きにドンブラコされたものが「低温」となっていることに違和感を持つ方がいらっしゃるかもしれません。もちろん人間の感覚としてはクッソ熱いところで変成作用がドンブラコ組に対して行われます。しかしながら深いからと言ってそれがそのまま熱いことになるのかというとちょっと異なります。
上にはざっくりとしたプレートの沈み込みの図を載せておきましたが、例えば大陸サイドのプレートがまた融け切っていない場所で海洋プレートの表面に堆積して形成されたチャートが変成作用を受けることを考えてみてください。これは実際に起こる変成作用なのですが、融けているマグマが直に触れあっている場所よりも、融け切っていないことからそこに比べれば低いこともあり得ることが理解していただけるかと思います。そのため「低温高圧」という表現が使われます。
変成岩
もう日付を回ってしまっているのでさっさと終わらせて寝たいことから、この項はさっさと終わらせていきたいと思います。
さてこのような変成作用を受けて変化した岩石のことを一般に変成岩と言います。有名なものには蛇紋岩や結晶片岩、ホルンフェルスなどがあります。
多分単独でそのうち記事を書くと思う。
書きました: 料理された変成岩
関連リンク
- 「岩石や地層のでき方」産総研地質調査総合センター。
- 地学のまも「変成岩」ちがくたす、地学基礎教室、2021年3月7日。
- 「続成作用と変成作用の違い」地球科学.com、2022年4月4日。
最後に
- 前回のざっくりわかる火山シリーズ: 山が崩れて流れ込む岩屑なだれ
- 次回のざっくりわかる火山シリーズ: 料理された変成岩
この記事を書いた理由としては私が入らなかったGeosophyの代表であるほたるさん(@Fire_fly_505)から以下のようなDMをいただいたことが一番に挙げられます。
蛇紋岩が超塩基性岩に全くカテゴライズされるということがないわけではないのですが、一般的に変成岩のイメージが強いということから、元の火成岩に関する記事はこっそりコマチアイトに差し替えています。ありがとほたる。
Geosophyの方では固体地球の第5回の一トピックで扱っていらっしゃるので、もしこの参考にならないカスサイトで時間をつぶすのではなくちゃんと学びたいなと思った場合はそちらの方をぜひご覧ください。