イーロン・マスクさんがTwitterを買収した後急激な人員整理を行ったことによるTwitterの機能不全の可能性がささやかれています。そのためMastodonなどのActivityPub対応のサービスに大量移住が起こっており、にわかにそういったものの注目が上がってきています。
このような中Tumblr(タンブラー)というSNSサービスの親会社のCEOがTwitter上で「TumblrをActivityPubに対応させる」と発言しました。今回はこの発言とその背景についてざっくりと触れていきます。
結論
- 親会社のCEOがTwitterで対応を示唆
- 今のところ情報はそれだけ
TumblrのCEO
Tumblrというサービスを一言で表現するのは難しいのですが、「やたらと共有機能が強いブログサイト」という表現が一番実感にあっている気がします。
このTumblrは2018年に性的表現を禁止したところ親会社だったベライゾンに売却先を探されるレベルで業績が悪化しました。その結果PornHubやRedTubeを持つMindgeekが買収に名乗りを上げるなどのすったもんだがあった後、2019年にWordPressの開発に携わる他WooCommerceやAkismetの販売で知られるAutomattic社に買収されることとなりました。
そのAutomattic社のCEOであるMatt Mullenwegさんは2022年11月21日にTwitterで以下のような発言を行いました。
We'll add activitypub for interconnect. Don't stress.
文字通りTumblrをActivityPubに対応させるといった宣言と捉えても問題はないでしょう。彼はTumblrをTwitterより良い場所にすることを2022年7月に表明しており、個人的にはその一環としてActivityPub対応を行うものではないかと思っています。
こんな記事にアクセスされる方々の大半は分かっていると思いますが、ActivityPubはW3Cが定める標準規格の1つです。規格化されたAPIを用いてSNSに求められる「投稿」・「削除」・「更新」といった機能を特定のプラットフォームに依存することなく実現するために定められています。もう少し分かりやすく表現するのならば、ActivityPubに対応しているソフトウェア間ではその垣根を乗り越えることが程度の差こそあれ可能で、まるで「TwitterのアカウントでInstagramの投稿にコメントをする」ようなツールを作り出せるというものです。
関連リンク
- Perez, Sarah "Tumblr to add support for ActivityPub, the social protocol powering Mastodon and other apps" TechCrunch, 2022-11-21.
- 松尾公也「Tumblr、マストドンと接続へ。分散型SNS標準プロトコルを採用し、Twitterからの脱出受け入れ強化(CloseBox)」TechnoEdge、2022年11月22日。
最後に
次回の技術関係の記事: サイトのドメインを変更した
Mastodon、というかActivityPubに対応したソフトウェア(AkkomaとかMisskeyとか)が動いている鯖なら別にどこに登録しても大きな問題はないのに、やたらとmstdn.jpであったりmastodon.socialであったりといった大規模鯖の登録者ばかり増えているようです。ActivityPubの規格はガバガバなのでMastodonに登録しておきたいという気持ちは分からなくはありません。しかし構造的に超大規模Mastodon鯖が常識的なチューニングで動くとは思っていないので、設計思想に従ってユーザーは素直に他のインスタンスへ登録するか引っ越せばいいのにと思っているのは私だけでしょうか。
そのような中でTumblrがCEOの発言とはいえActivityPubへの対応を示したことは、Tumblrにとっても既存のFediverseコミュニティにとっても福音ではないのでしょうか。Tumblrを使いこなせるような人とFediverseにアカウントを持つような物好きの文化はそこまで遠いようには思えないですし、互いの負担を軽減できるものとなる可能性があります。ただFediverseインスタンスの大半は営利を目的としていないので、マネタイズをしたいTumblr運営とコミュニティの衝突は多少なりとも起こりそうな予感はしています。この予感が現実にならないことを祈りながら、今後も動向を注視していこうかと思います。