大昔に私は「足柄県は地学の楽園」という画像をインターネットへ放流させていただきました。これは「岐阜県とかいう地学の楽園」というツイートに触発されたもので、作成されたピカイアさんに許可をいただき公開させていただきました。後々ピカイアさんから「現存しない都道府県を紹介したとしても、そこに住んでいる人やゆかりのある人の共感は得られなくないのではないか?」という極めて妥当なツッコミを受けている通り、あまり広がりはしませんでした。しかし個人的に楽しかったのでまあいいでしょう。
さて私は友人からの紹介を受け伊豆に行く機会を得ました。いい機会と思ったので無理矢理その行程に「足柄県は地学の楽園」で紹介させていただいた「約100年前生まれの横ずれ断層」の観察をねじ込んでみました。というわけでねじ込まれた断層観察のレポートを書いていこうかと思います。
結論
- ぱっと見ではよく分からないかも
- 分かった瞬間に動きの大きさを体感できる
丹那断層
丹那断層は伊豆半島北部から静岡県東部に向かって南北方向に走っている断層です。近年の活動としては1930年の北伊豆地震が知られています。この地域には北伊豆断層帯と呼ばれる活断層帯が分布しており、その中の最たる断層です。
丹那断層は伊豆半島北部の山間にある丹那盆地の東端を通っており、その地形に大きな影響を与えていることで知られています。
上の図では淡色地図に5万分の1地質図幅と陰影起伏図を重ねました。自分で地図を動かしてみるとより分かりやすいと思うのですが、緑色で示されている丹那断層が南北方向の地形に大きく影響を与えていることが分かります。また周囲にある断層も若干分かりづらいかと思いますが地表に現れるレベルの運動をしていることが読み取れるかと思います。
丹那断層公園
丹那断層公園はそのような丹那断層が動いた形跡を間近に見ることが出来る公園です。丹那盆地の南東に位置し、丹那盆地内にバスはほとんど乗り入れていないことからタクシーを用いないとアクセスすることが難しい場所にあります。公園と名前が付いている通り基本的には公開されており、来たところで満足できるかどうかは分かりませんが夜中でも断層を観察することが出来る場所です。
さて公園内に入ってみましょう。
公園内にはこのように地震前からこの場所に存在していた石による装飾物が置かれています。しかしながらそれにしてはズレているように見えませんか。輪っかのような形なら自然ですが、不自然に半分ずつ左側にずれていますし、その奥にある水路のようなものもぷっつり切れたようになっています。
ぱっと見だと分かりづらいかと思うので線を引いてみました。
赤い色で示したものが輪っかのような石、オレンジ色で示したのは水路です。答えは「丹那断層公園」という名前に示されているのでなぜこうなってしまったかは明らかなのですが、この石の装飾物がある場所にちょうど断層と地表が交わった線が走っており、その断層が活動したため
ここから分かることとして、丹那断層は左横ずれの動きが卓越していることが挙げられます。また元々赤やオレンジで示されている物が1つであったことを考えると、1930年の北伊豆地震においては1メートルほど動いたのではないかと考えられます。
また丹那断層公園には地面を掘り下げた「断層地下観察室」というものもありました。名前の通り断層を地下で観察することが出来る場所です。もっとも地下といっても半地下のようなもので、ジメジメしていたりだとか観察できる時間が限られたりとかはありませんでした。
このサイトはあまり転送量に余裕がないのとユーザーサイドにあまり通信量を使わせたくないためかなり非可逆圧縮をかけているのですが、それでも分かるレベルでバッチリ断層が走っているのが見えます。見事に破砕されていますね。また土石流によって到達した大きな石などもあり、当たり前ですが断層以外にも見どころがある露頭だったなと思います。
最後に
前回のおでかけ: 琥珀発掘体験が出来る久慈琥珀博物館
無料で地下の断面まで見させていただけるのは大変ありがたかったです。ただアクセスする際に看板が少なかったことから、初めて来る人は迷ってしまうのではないかなとも思ってしまいました。伊豆半島ジオパークの中でも熱い場所だと思っているので、もう少し分かりやすい案内があれば嬉しいなという気持ちです。