共通テストとなって3回目の試験が2023年1月14日・15日に行われました。というわけで2023年基礎無し地学を勝手に解説していきたいと思います。さすがに全ての内容を一日の記事にしてしまうと長くなってしまうので大問ごとに分割してみました。この記事は大問1について扱っています。それでは、見ていきましょう。
注意
- この解説に付き、大学入試センターやその実施大学と一切関係はありません。
- 著作権関係の問題が発生する可能性がありますので、試験問題そのものの転載はしておりません。そのため大学入試センターや新聞社のWebサイトなどから問題を入手されることをおすすめします。
- この記事における内容の正確性は一切保証しておりません。
問1 - 2次元から2次元へ
図1上においては東北地方周辺の震源が震源の深さごとに記号で示されています。等高線を引くのと同じ要領で線を引いて見ると分かると思いますが、A-B線上において東から西に向けて深くなる方向で震源の深さが深くなっています。両端が300kmと0kmであることはすぐに分かるので、回答は3もしくは4にするべきことはすぐに分かり、A-B線の中点付近における震源の深さを鑑みると3が正答であることが分かります。
問2 - 偏光顕微鏡と鉱物
この問題ではオープンニコルで鉱物を2方向から観察したものが示されており、その外形とそれに対応する鉱物名を選択する問題となっています。これは中学校技術科で習得できる図面の描き方や中学校数学科で学べる図の描き方を応用すれば外形の選択は容易と言え、「イ」の角柱状のものとなります。また鉱物の選択肢は橄欖石と角閃石ですが、角柱状の外形を持つ鉱物として知られているのは角閃石です。そのため正答は4であると言えます。
注意するべき点とすれば、偏光顕微鏡がオープンニコルである点でしょうか。偏光顕微鏡と聞いた際には、色鮮やかなことの多いクロスニコルを思い浮かべてしまうことが多いと思うのですが、この問題においてはオープンニコルでの観察であることに留意する必要があります。偏光顕微鏡を触ったことのない方はSCOPin rockや岐阜大学教育学部理科教育講座のデジタル偏光顕微鏡などで、どのように観察できるかを体感しておくとイメージが付きやすいかもしれません。
問3 - 地質図と傾斜
この問題では簡易的な地質図を読み取る能力が問われます。「傾斜の向き」というのは一般的に下がっている方を指す言葉ですので、その点さえ注意すればそこまで難しい問題ではないでしょう。また地質図の隣に谷地形の概形が示されているので、頭の中で適当に地層を挟み動かしてみると地質図が何を示しているのかが容易に理解できると言えます。そのため正答は3です。
問4 - 温帯低気圧をスライス
問題の概要を読み取ることは難しいのですが、選択肢にどのような差異があるのかをパッと読み取るのが難しい問題と言えるでしょう。この問題の選択肢は2つの軸で異なる点があり、
- 鉛直方向の温度勾配
- 前線の前後での温度変化
と言えます。この2点が理解することが出来れば簡単な問題であると言えます。まず初めに成層圏までは地表から離れるに従って一般的に気温が下がっていくことが知られています。これは常識的に考えて自然でしょう。次に温暖前線が通過した後にはその地域は温暖に、寒冷前線が通過した後には寒冷になることが地学の授業を適切に受けていれば学ぶことが出来ます。この気温の変化を言い換えれば、「暖かくなること」は同じ高度でも気温が上がること、反対に「寒くなること」は同じ高度でも気温が下がることと見做せます。というわけでここで示させていただいた条件の両方を満たす選択し、すなわち正答は2であると考えられます。
問5 - 絶対等級と見かけの等級
この問題、個人的にはこの大問の中で一番難しい問題であると言えると思います。絶対等級と見かけの等級の違いは知っていたとしても、それがすなわちこの問題を即座に解けることを意味しません。またアルニタク(オリオン座ゼータ星)という知名度があまりない恒星を含めることで知識で殴ることを防いでおり面白いと感じました。
しかしながらこの問題は絶対等級が本質的に何かを知っていれば、解ける問題であると思います。絶対等級というのは観測者から10パーセクの距離に恒星を置いた際の等級、すなわち恒星の明るさを示したものです。地球から恒星までの距離は様々なものがあり、見かけの等級はその距離によって大きく変化してしまいます。そこで10パーセク(約32.6光年)という距離に置いたと仮定して議論を行います。これが絶対等級です。
すなわち絶対等級と見かけの等級に差があれば、実際の距離について10パーセクからの差があると考えられます。この問題においてはご丁寧に100パーセクのラインが引いてありますので、そこを基準に垂線を引いて見ると、その垂線の長さが100パーセクからの差を示すこととなり、その大小は地球からの距離を若干遠回りの形ですが示していると言えます。そのため正答は2です。
ちなみに実際の距離は以下のようになっています。
- ベテルギウス: 約170パーセク
- アルニタク: 約230パーセク
- リゲル: 約260パーセク
関連リンク
- 全体の解説
- 大問ごとの解説
- 2024年の第1問の解説
- 「2023年 共通テスト 地学 第1問 解説」Geosophy、2023年2月4日。
まとめ
冒頭の「我々が自然を理解するには(紙という媒体である以上)図から得た二次元情報を三次元に復元する必要がある。」といった文章でビビった人もいらっしゃるかもしれませんが、実際に解いて見ると基本的な地学の知識があれば簡単に解ける物でしたね。解く過程で情報が頭の中で組みあがっていくという楽しい体験が出来る問題であるとも感じたので非常に良い大問だと感じました。