共通テストとなって3回目の試験が2023年1月14日・15日に行われました。というわけで2023年基礎無し地学を勝手に解説していきたいと思います。さすがに全ての内容を一日の記事にしてしまうと長くなってしまうので大問ごとに分割してみました。この記事は大問2について扱っています。それでは、見ていきましょう。
注意
- この解説に付き、大学入試センターやその実施大学と一切関係はありません。
- 著作権関係の問題が発生する可能性がありますので、試験問題そのものの転載はしておりません。そのため大学入試センターや新聞社のWebサイトなどから問題を入手されることをおすすめします。
- この記事における内容の正確性は一切保証しておりません。
問1 - 高度分布
この問題は地球表面の高度分布に関連する2つの文章の正誤を問う問題です。この2つの文の主張は大まかに以下の通りです。
- a: 密度が小さく厚い大陸地殻と、反対に密度が大きく薄い海洋地殻がある
- b: 1000mより浅い海洋を陸地と見なすと、陸地の方が海洋より大きくなる
この2つの主張をそれぞれ検討していきましょう。
aについてはまともに地学の講義を受けていれば「それはそう」と思えるものです。誤っている主張は見当たりません。このサイト上において地殻単体で解説をしたことが意外にも無いのですが、「地殻とリソスフェア、何が違う?」や「海洋底拡大説は名前の通りの説」、「ざっくりわかるアイソスタシー」で間接的に解説させていただいています。よろしければご覧ください。
bについては悩む方がいらっしゃるのではないでしょうか。1000m以浅の海洋の大半は大陸棚ですが、陸地の3分の2もあるのかどうか…。多分あまり気にしたことが無いと思いますので実際のデータを見ていただきましょう。
こちらの画像はNOAA/NGDCからいただいてきた2006年の画像です。かなり古い画像ですが、大まかな形状は変わっていないでしょう。海底のうち水色で色付けされている部分は浅い海ですが、これを足して勘定したところでどう考えても海洋の方が多いと言えます。実際には大洋の大半が1000mより深いため、これもあってbの主張は誤っていると言えます。というわけで正答は2です。
追記: フィードバックをいただいて気づいたのですが、図1に高度分布が提示されていますね。これを読み取ると1000m以浅の海洋は全球の8%しかないことがすぐに明らかになります。そのためこのようなまどろっこしいことをしなくとも正答にたどり着けます。
問2 - 3つの地震観測点
当たり前と言えば当たり前ですが、震源から離れた場所ほど同一の地震でも揺れ始めるタイミングは遅くなります。というわけで正答は4です。
問3 - プレートと断層
センター試験でもお馴染みだった文章の穴埋め問題です。文章に合わせて適切な選択肢を選びましょう。
まず問3に係る選択肢で話題となっているのは中央海嶺です。日本に近い海溝に関する話ではないことに注意しましょう。海嶺においては下からどんどん新しいプレートが生み出されているため、押し込まれるというよりは押し出されるような力を受けます。言語で示すのは難しいのですが、このような場所においては正断層が形成されると考えられます。横ずれ断層が右なのか左なのかは、断層を挟んだどちらかに立つことによって判断することが出来ます。というわけで正答は2です。ちなみに海嶺や海溝においてはアイソスタシーが成立しないことが知られているので、アイソスタシー関連の変な問題の題材になりかねないことは知っておくとよいと思います。
横ずれ断層は「海洋底拡大説は名前の通りの説」で解説させていただいているトランスフォーム断層が有名ですが、別にトランスフォーム断層だけが横ずれしている・横ずれが卓越しているといったわけではありません。上の画像で示させていただいている丹那断層などがその例として挙げられます。
問4 - 偏西風と火山砕屑物
火山フロント(火山前線)付近には線状に火山が分布することが知られています。東日本においてはその線が南北方向に走っているためその線に対して垂直に見ることで、東西方向への火山砕屑物の動きを考えることが出来ます。
ところで日本の上空には偏西風という西から東へながれる風が流れていることが知られています。ある程度の規模の噴火がなされると火山砕屑物が高く上げられてしまうので、その偏西風により運搬がなされることが知られています。その結果火山砕屑物は東の方に偏って堆積すると考えられます。また日本の沖には強い海流が流れているため、海中にはあまりそのような砕屑物が堆積していないと考えられます。そのため正答は1です。
問5 - マグマの形成理由の違い
マグマと一言で言っても、どのように形成されたのかという観点からすれば異なるマグマがあります。マグマは一般的に形成される条件とその場所の条件を照らし合わせば容易に正答へたどり着くことが可能で、正答は3です。詳しい話は「マグマの作り方」と「沈み込み帯でのマグマの形成」をご覧ください。
関連リンク
- 全体の解説
- 大問ごとの解説
- 2024年の第2問の解説
- 「2023年 共通テスト 地学 第2問 解説」Geosophy、2023年2月7日。
まとめ
固体地球と言えば、といった感じの問題だったと思います。変な癖もなく解きやすい大問であったと言えます。このサイトにおいては「ざっくりわかる固体地球シリーズ」及び「ざっくりわかる火山シリーズ」というコンテンツを提供させていただいているので、この共通テスト問題以上の学習をしたいと思われた方は是非参照してください。