「The 蛇紋岩展」を見に行った

異様に蛇紋岩と触れ合える最高の空間 / 2023-02-23T00:00:00.000Z

蛇紋岩という岩石をご存じでしょうか。私は知っています。名前の通り蛇の皮のような模様が特徴的な岩石で、橄欖石と水が高圧環境で接することによって発生する蛇紋石化作用を受けることによって形成される蛇紋石を主体とした岩石です。

しかしながら私は蛇紋岩についてこの程度の知識しかありませんでした。そんな私に対してもそれ以外の人や蛇紋岩マニアに対してもめちゃくちゃ面白い特別展「The 蛇紋岩展」が埼玉県立自然の博物館で開催されていました。今回はこの特別展がどのようなものであったかを簡単に記録していこうかと思います。

結論

  1. 蛇紋岩ばかり集めた展示
  2. びっくりするほど詳しかった

埼玉県立自然の博物館

埼玉県立自然の博物館というのは、「地球の窓」という呼び名で知られる埼玉県長瀞町に位置している博物館で、その名前の通り自然科学の展示が強い博物館です。一般でも200円という極めて安価な入場料にいい意味で釣り合わない常設展示で知られている他、定期的に質の高い特別展が開かれていることで知られています。今回ご紹介させていただく「The 蛇紋岩展」もその1つです。

「The 蛇紋岩展」の入り口

特別展は博物館の2階において行われており面積としては決して広いものとはいえないような場所での展示でしたが、ものすごく濃密な展示でした。途中で展示替えをされたらしいので、その「前半」となったものを見られなかったのは残念ですが進んでいきましょう。蛇紋岩展の入り口にはある意味当たり前と言えば当たり前なのですが「蛇紋岩とは何か?」ということについて解説がなされていました。

蛇紋岩とは何か?

蛇紋岩というのはどのようなものかについては私もある程度は知っているつもりで、橄欖岩と水が蛇紋岩化作用と呼ばれるものを受けて蛇紋岩となるということは知っていました。しかしながらその細かいプロセスや、さらに高い圧力を受けると一旦形成された蛇紋岩が水を放出する脱蛇紋岩化効果が存在することは知りませんでした。これらのプロセスについて 実物(変橄欖岩)とセットで 分かりやすくかつ詳細に紹介されていました。このサイトの「ざっくりわかる」とはある意味正反対の、正しさと分かりやすさと詳細さを備えた展示に圧倒されてしまい、幸いなことに(?)人が少なかったことから10分ほど見入ってしまいました。どうも不審者あかりさんです。

ここだけで200円の入場料を回収したような気分になっていますが、まだまだ特別展の展示室には先があります。進んでいくしかないので進んでいきましょう。この次においては蛇紋岩の構造について触れられていました。蛇紋岩の構造として一般に、

  • リザーダイト
  • クソコラクリソライト
  • アンチゴライト

の3種類が知られています。この特別展は「The 蛇紋岩展」ですので、当然ながらこれらの構造を持つ蛇紋岩について実物と共に紹介されていました。それぞれを単体で見ることはよくあるのですが、並べられると想像よりも構造に大きな差があることを実感することが出来ました。またそれぞれの特徴が良くつかめる標本と並べて、分かりやすいながらも実際の産状に近い標本が置いてあり、実態としてどのように産出するのかまでを学べるものであったと思います。

様々な作用を受ける蛇紋岩

先に進むと先程の蛇紋岩とは打って変わって…というのは違う気がしますが、より様々な形態をしている蛇紋岩が展示されていました。先程までは「蛇紋岩」そのものについての展示でしたが、ここにおいては様々な作用を受けた蛇紋岩が展示されていました。いくつか展示されていたものを紹介しようかと思います。

まず初めに赤鉄鉱を含む蛇紋岩です。蛇紋岩が生成される蛇紋岩化作用においては、橄欖岩と水から蛇紋岩と磁鉄鉱が生成されます。すなわち蛇紋岩には磁鉄鉱が含まれるということがあるということです。磁鉄鉱がもし酸素に触れた場合を考えてみると、まあご想像の通り磁鉄鉱が酸化されます。そのため赤鉄鉱を含む蛇紋岩が存在することもあります。赤鉄鉱が含まれているという蛇紋岩は見た目が本当に赤く、これを野外で見つけたら蛇紋岩であるかどうかを考えてしまうような見た目をしていました。

その他

書いていてかなり息切れしてしまったのでこの辺りで留めておこうかと思うのですが、この他にも多種多様な展示がなされていました。箇条書きにするとこんな感じです。

  • 海山において形成された、炭酸塩鉱物を伴う蛇紋岩
  • クロムを得るためによく採掘されるクロム鉄蛇紋岩
  • 炭酸塩鉱物の方が多くなってしまった蛇灰岩
  • 蛇紋岩化作用が起こっている場所で形成される様々な変質岩
  • 森林土壌において花崗岩を主体としているものとの違い

…といった感じです。私が拾いきれていないものもあるかと思いますが、どの展示も新発見があるというもので、とても面白かったです。

外部リンク

最後に

前回のおでかけ: 酪農王国オラッチェという丹那牛乳の里

「THE 蛇紋岩展」という名前にふさわしく、蛇紋岩の魅力をこれでもかと伝えてくださる展示でした。私はこの分野にそれほど明るくはなかったので純粋に勉強になりましたし、蛇紋岩に興味がある方にも楽しめるものであったと思います。

企画展ですのでもう終わってしまいましたが、常設展示も「地球の窓」たる所以を十分に体感できるものだと思います。「地学、実はめっちゃ面白いかも」と思われ始めた方にもおすすめの博物館ですので、興味があれば訪れてみるといいかと思います。

Writer

Osumi Akari