2023年10月26日に「Cities: Skylines II」が発売されました。発売前はシムシティ (2013)を一瞬で抜き去ったシティスカの続編としてかなり期待がなされていました。しかしながらUnityに頼れない部分の実装が開発会社にとって過大であったのかパフォーマンスが極めて悪い状況でリリースされた上、これが多数のバグも含むものであったので、その期待に応えられているとは必ずしも言えません。そのため残念ながらゲームメディアも新機能ではなく極めて悪いパフォーマンスで話が持ちきりとなっています。
こういった色々な事情のせいなのか、それともアフィリエイトばかりの自称Wikiサイトが勃興しすぎたのかは分かりませんが、インターネット上に参考できる内容が残念ながらほとんどありません。参考になるのがSteamのレビュー欄くらいにしかしかない状況となっています。そのため多少の憶測を含みますが、50時間遊んだ感想及び気づいたことを書いていこうかと思います。
結論
- 重い!!!!!!
- 新機能は極めて良い
- 公共交通が使い物になっている
重いしバグもいっぱいだし
前文にも書きましたが、このゲームはめちゃくちゃ重いです。可能な限り設定を低くした上でFSRを使用していますが、それでも20fpsが出ればよい方で、操作からワンテンポ遅れたり入力したと思っていた操作が出来ていなかったりすることもしばしばです。前作では街が発展していくにしたがって徐々に重くなっていきましたが、今回はそうではなく街が発展してようがそうでなかろうが、ものすごくゲームが行いづらいものとなっています。前向きに見ようとすればどんな大都市になろうがゲームが同じ快適さで楽しめるということですが、肝心のその快適さが終わっているので何もプラスに感じられません。
公式もこれを認識しているようで、発売日の前日に「パフォーマンス向上ガイド」が公開されています。ちなみに公式のパフォーマンスに関する投稿曰く「FSR2とDLSS2はどちらも時間的アンチエイリアスを使用する必要がありますが、一部のオブジェクトがこの技術と互換性がないため、現時点では実現不可能です。」とのことなので、少し前に†X†上を駆け回っていたAI技術の素晴らしい活用はまだ遠い未来と思っておいた方が良さそうです。
さらに言えばGPUに過大な負荷をかけているようで、50時間遊んでいる間に3回のブルースクリーン(エラーコード: VIDEO_TDR_FAILURE
)を出しており、快適にプレイすることが出来ないという域を超えています。当然ですがブルースクリーンが出てしまった場合、これまでのプレイデータは保存されていません。そのため全くもって抜本的ではありませんがオートセーブをオンにしておくと、悲しみを小さくすることが不可能ではないのかなとは思います。
また怒涛のバッチリリース(今日までにリリースノートが出ているものだけで、1.0.11f1・1.0.12f1・1.0.13.f1・1.0.14.f1・1.0.15.f1の5回)によって修正されつつありますが、本当にテストプレイがなされているのかと疑問に思ってしまうようなバグや問題が多数存在していました。修正済みの物も含めて例えば以下のようなものがあります。ちなみに全て遭遇済みです。
- ゴミ・遺体・郵便物等の回収が上手くいっておらず、いくらこれらを回収する施設の横であっても積みあがってしまう
- そうした設備の処理能力が極めて弱く、すぐに満杯になってしまう
- 経路検索のペナルティに含まれていないのか、車両がUターンを多用してしまい道路交通を阻害してしまう
- 住宅用地が余ってさえいれば住民がやってきてしまうので、大量の失業者が出てしまう
- 反対に商工業地域は需要さえあれば建築が行われてしまうので、容易に人不足になってしまう
- 郵便局は機能していても郵便仕分け施設が機能しておらず、郵便容量が逼迫していたとしても適切な仕分けが行われない
- 市民は路面駐車が好きすぎるのか、建物に付属していたり地域に所在する駐車場に車両を停めるよりも路上に停めたがるおかげで、市民が帰宅するまでに謎の長距離徒歩移動を行ってしまう
こうした問題の多くは時間をかけて解消されるとは思いますが、プレイヤーの体験よりもリリース日を優先したと言われてもおかしくないほどのものだとは思います。トレイラーなどから期待していたのもあって、こういった問題には残念にさせられました。
新機能
ここからもう少し前向きに、たった50時間プレイしただけで感動できるような新機能・新要素について書いていこうかと思います。
住宅の需要が3種類に
前作では住宅の需要は素直に1種類のみでしたが、今作では低層住宅・中層住宅・高層住宅の3種類に分かれています。それぞれに需要が設定されていることの問題点として、例えば高層住宅(タワーマンション)のエリアを用意したところで全然その場所には住んでくれないのに住宅を求める声が鳴りやまないといったものがあります。市長としては大変理不尽かと思いますがこうした声を聴き、適切な種類の住宅を住人のために用意する必要があります。
さらには世の中の人間は広い家にとにかく住みたがるようで、街に大きな問題が無ければ低層住宅の需要はずっと伸びていってしまいます。そのためある程度低層住宅の需要は無視した上で、中層建築のマンションやロッジのエリアを設定したり、低家賃住宅(ニューヨークの少し外れたところにあるような安い集合住宅)を用意してあげたりする方が、土地をより効率よく使えるかと思います。
車線
前作と比較して道路の種類が大きく増えています。これに伴って前作では曖昧だった車線の概念がよりしっかり取り入れられているように見えます。
1車線の道路ではあまり気にすることはありませんが複数車線がある道路に向かって道路を引こうとすると上の写真のように点線が出てきます。これはその道路が接続する車線を表しており、例えば1車線の道路から3車線の道路へ直接繋ごうとすると以下のような3通りとなります。
このようなシンプルな例ですとかなり分かりやすいですが、街が発展していくと複数車線対複数車線の道路を接続することが往々にしてあります。そのような場合において接続する車線を間違えてしまうと道路の形が変になってしまうというビジュアル的問題に加えて、経路検索が上手く働かないようになってしまうのか容易に交通渋滞を生み出す原因となってしまいます。チュートリアルにおいては特に触れられていた形跡はありませんが、心に留めておいていただければと思います。
話は変わりますが、前作と比較して道路を選択するAIの性能が大幅に向上しており、アドオンを入れずとも快適に進路変更をしてくれるようになりました。しかしながら完璧というわけではなく、まだ現実的とは言えない挙動をすることが多いと言わざるを得ません。特に3車線以上の場合ではかなり極端な車線変更をしてしまうことによって渋滞を発生させてしまいます。また交通事故が実装されたことにより、これを誘発しやすい極端な車線変更はさらに交通の流れを悪くしてしまいがちです。
そうした場合は車線を1つずつ増やしていくことによりこの問題をある程度は改善することが出来ます。もちろん後述する公共交通を活用してそもそもの交通量を抑制することも重要です。
交通事故
加わってもあまり嬉しくないような要素として交通事故が追加されました。これはランダムで発生する様ですが、路面状況が悪化していると体感で分かる程度に起こりやすくなります。これによって発生する問題としては交通事故に遭われた当人がその場に拘束されてしまう上医療機関が圧迫されるといったことがありますが、そういったことよりも交通渋滞の大きな原因となってしまうというものがあります。現実と同じように渋滞中でも事故は発生するので、状況が悪化しやすいという点にも注意が必要だと思います。
交通事故を解決するためには警察の車両と道路整備車両の双方、場合によっては救急車が必要とされます。道路整備車両は現実でいうところのNEXCOのようなものですが、高速道路だけではなく一般の道路の維持管理も担当しています。先述の通り交通事故が発生してしまいますと交通が大きく滞ってしまいますので適切に建築しておく必要があるかと思います。
開発ポイント
人口が増えるにしたがって建設できるものが増えていっていましたが、今作においてはこれに似たような形で一定の「経験値」が得られるごとに「開発ポイント」が付与されるという形が取られています。この開発ポイントを用いてアンロックするような形で使える建物が増えていっています。前作と異なる点としてはこれらの開発ポイントは必ずしも使う必要が無いため、特定の分野については先進的にする・反対に特定の分野は充実させないといったことを行うことがあります。
例えば上のツリーでは効率の良い発電設備が欲しかったため石炭発電所までは一直線で取りましたが、原子力発電所までは要らなかったのでポイントを使わず他の物のアンロックに用いるといったことをしています。開発ポイントになったことで、街の開発方法にプレイヤーの選択肢がより広がったのではないかと感じています。色々な人がプレイするようになった後には、どういう風に開発ポイントを使っていくかという点を見ることが出来るのではないかと思います。
生産エリア
前作には産業特化地域を設定することによって農業や林業といった特定の産業に特化した生産活動を行わせることが出来ました。今作ではこれを基に、生産をする施設を建設した上でその建物の周囲にエリアを設定することで、木材や穀物、砕石といった特定の一次原材料を生産させることが可能です。
特に畜産物は公害が少ない上に特定の地下資源を必要としないため、空いた土地の活用として極めて向いています。建物の周囲から円形にエリアが設定できる領域が決まっており、細長い長方形の土地などでは効率が悪いですが、都市の収支の改善にも役立つため試してみる価値はあるのではないでしょうか。
風向き
前作においても産業地区の近くに住宅地区を設定すると土地の汚染が広がってしまい住人が出ていってしまうといった事態が発生しておりました。これについては産業地区と住宅地区を離すことによって容易に回避できましたのでそこまで気にされた方はいないかと思います。
しかしながら今作においては「風」という概念が導入されており、当然ながら風上と風下を気にする必要があります。産業地区は残念なことに土地だけではなく大気も汚染してしまうため、土地や高速道路の都合にのみよって産業地区を決めてしまうと、風下に広がった汚染によって住民たちが出ていってしまうという可能性があります。この汚染は広がるまでにかなりの時差があるため、風向きを情報ビューから確認しておかないと気付くことが出来ないようなものとなっています。そのためよく注意する必要があるかと思います。
公共交通
前作ではDLCを購入しないと種類が少ない上に、取り敢えず地下鉄を使っておけばまあよかった公共交通ですが、今作では大きく機能強化がなされています。
使い物になっている最たる例がバスで、1台に最大80人(!)が乗れるようになりました。またデフォルトでバスターミナルが用意されており、沖縄のような路線バス網を組むことも決して難しくはありません。このバスターミナルはタクシーターミナルを並置できるようになっており、市民の利便性を上げることに寄与しています。ちなみに今作においても需要を見極めることが難しいので、タクシーを取り敢えず走らせておき、よく往復がなされているところを観察してそこにバス路線を設定するなども良いでしょう。
他の交通機関も積載量が大幅に増えており、地下鉄も180人ではなく1080人まで乗れるようになっています。また路面電車は二車線道路でも複線で敷設できるようになっており、路線設計の自由度が大きく増していると言えるでしょう。
鉄道駅には地下鉄の駅をそのまま繋げることが可能で、バスとタクシーのようなスムーズな乗り継ぎを市民にさせることが可能です。もちろん近接した場所に駅を置いておくときちんと乗り換えを行ってくれますので、地下鉄駅を通るようにバスを走らせ、バスから地下鉄に乗り継いでもらうといったことを行ったり、地下鉄は大回りして長い距離を走らせ路線の設置コストを抑え、線路では遠いが距離的には近い駅を繋ぐように路面電車を走らせるといった方法を取ることも簡単です。
また貨物列車ターミナルは鉄道によって大量の貨物を都市内でも都市外からでも受け入れ、そして送り出すことが可能です。貨物鉄道のプラットフォームは貨物港や空港に直接付けることが出来ますので、そうした施設への混雑を軽減するといった効果もあります。もちろん前作よりも貨物積載量が増えており、効率が極めて良くなっていると言えます・
一方ほぼ全ての乗り物に経路設定と車両基地(車庫)の用意が必要という点は留意しておく必要があります。これによって前作のように大して積んでいないのに数だけ出てきて詰まってしまう貨物列車のような事態は発生しませんが、都市がものすごく上手く行った場合には輸送不足になりその拡張が簡単ではないということも意味するため、車両基地及び拡張が出来るスペースは常に確保しておいた方が良さそうです。
最後に
前回のCities: Skylines関連記事: バニラでバス専用レーンが追加されたシティスカ
というわけでシティスカ2に感じたことについて簡単に書いてみました。本当になぜか分かりませんが、日本語で有用な情報を見つけるのが難しく、プレイしていて参考になる情報がほとんど無いため、あまりいい意味ではない意味で試行錯誤の繰り返しを強いられています。
これまで述べた通り、現状のこのゲームは完璧な納得感と共におすすめできる状況ではありません。しかしながら目を見張るような良い点もあり、時間と共に良いゲームになっていくのではないでしょうか。50時間遊んでみたという視点からの感想はあまり無くて申し訳ないのですが、何らかの参考になれば幸いです。