Twitterであった現在のXは、今年の7月にはツイート(現: ポスト)が読み込めなくなったり、CTOがピザゲートを支持したりしている影響で、他のSNSへと主軸を移したりそもそもアカウントを削除したりといった人々・組織が続出しています。
特に、虚偽であることが明らかとなっており一般に陰謀論として扱われるピザゲートをCTOであるイーロン・マスクさんが明瞭に支持したことにより、同氏の反ユダヤ傾向によって企業が撤退しつつある状況がさらに加速されています。この度W3CがMastodonへ本格的に移行したことが報告されたため、一応記録を取っておこうかと思います。
結論
- Webの基準を定める標準化団体
- 従来からMastodonをセルフホストしていた
- 今後はActivityPubを読み書きできるツール(Misskey等)で情報を得られる
W3C
こんな記事を読みに来ている人の大半はW3Cがどのような団体かをご存じかと思いますが、念のため簡単に説明しておこうかと思います。W3C、World Wide Web Consortiumは、インターネットの中でもこのサイトのようなWWWに関わる技術の標準化(特定の物事に使う規格等を定めること)を行う組織です。WWWに関わる組織によって構成されており、WWWの発明者であるティム・バーナーズ=リーさんが率いています。
標準化を行った(行っている)ものとしては以下に挙げるようなものがあります。
- HTML(2017年以降はWHATMGへ移行)
- CSS
- CGI
- XML
- XSLT
- SVG
このような団体が存在することによって、例えばブラウザが異なることによって表示が異なるといった問題が発生する可能性を抑えることが可能となります。というよりもこのW3Cはそうした問題が発生したことに伴って出来てきたという歴史があり、WHATMGが結成されたりすることもありましたが現在ではこうした団体とも協調してWebの標準を定め続けています。
MastodonとW3C
Mastodonというソフトウェアの名前は最近再び聞かれるようになったのでご存じの方も多いかと思います。これはオイゲン・ロッコさんによって開発されたSNSで、今は課金しないと使えないTweetDeckに似たUIを持つことが特徴とされています。これがUIにおける特徴とするのであれば、他のサーバーとActivityPubという規格を通して通信できるというのが機能における特徴と言えるでしょう。
従来のSNSは単一の企業が保有する(所有権的な意味で)単一のサーバーにのみ全てのデータが集中していましたが、これとは反対に複数のサーバーがネットワーク上に存在しそれぞれが通信しあうことによってSNSを形成するといった特徴があります。イメージとしてはメールが近いかと思います。
このMastodonは当然ながらサーバーは1つではなく、技術と設備があれば自分でそのサーバーを持つことが出来ます。W3Cもそうしたサーバーを保有しており、w3c.socialというサーバーを2017年7月から運用しています。
XからMastodonへ
2017年からセルフホストしたMastodonで情報発信をしていたとはいえ、W3Cはそれ以前からTwitterアカウント(@w3c)を運用しており、Mastodonを立てたからといって即座にTwitterでの発信をやめるということはしていませんでした。しかしながら先述した通り誰かによってTwitterが†X†に変更され、従来掲げられていた「開かれた会話と議論の場」というものに対してこれまで以上に疑問符が付くようになり、かつTwitter Blue / X Premiumといった荒削りの有料プログラムを開始したことにより、情報発信プラットフォームとしての価値は色々な意味で下がっていきました。
2023年12月7日、W3Cは以下のポストに示すツイートを行い、自らのアカウントを非公開(鍵アカウント)にしました。
今回更新が停止されたのはあくまでW3Cの公式アカウントのみで、その構成員の全てがTwitterから離れているわけではありませんが、「We are encouraging all W3C-related accounts to do the same.(私たちは、W3Cに関連する全てのアカウントに同じことをするよう奨励しています。)」とあるように、関係するTwitterユーザーもTwitterを離れる可能性が示唆されています。
またTwitterのフォロワーにはMastodonでW3Cをフォロワーするように勧めており、最大で19万人のユーザーがMastodonをはじめとするFediverseへ流入する可能性があります。
最後に
私自身もTwitterを離れ、セルフホストしているFirefishのアカウントを主な活動場所の1つとしていることからかなり身近な話に感じました。最近ではパリ市長もTwitterを離れている(フランス語版)ことから、こうした公共的な要素を持つ組織が徐々にTwitterから離れていくと思っています。
とはいってもそうした人々の行き先がMastodonやMisskeyといったFediverseであるとは限らないということは留意するべきでしょう。ActivityPubの策定にはW3Cがかなり関わっていることから、W3Cがこれを利用しているMastodonに移行したのはある意味必然であって、他の人々がそうであるとは限りません。
個人的には自由な世界に来て欲しいとは思いますが、現実的には人々が自由をそれほど愛していないらしく自由ではないSNSに人々が集まっています。公共的な組織は人々が大量にいるところへ情報を出したいでしょうからそうした自由ではないSNSへ移動していくのではないかと思います。ちょっと寂しいですね。