デカデカ回る地形輪廻

よく考えたら割と当たり前なやつ / 2022-09-24T00:00:00.000Z

後々詳しく話すことになるとは思いますが、堆積というのはどのような場所で行われるのでしょうか。もちろん様々な場所で行われることなのですが、基本的に水が関わる堆積の多くにおいては、

  • 水のにある時は削られ
  • 水のにある時は積もる

ということが言えるかと思います。すなわち水の下において地層が形成されていき、それが何らかの理由で地上へとたどり着いたらば雨風に侵食されていくといった感じです。もし特定の場所が繰り返し水の上から下へ、下から上へと移動しているのであれば、このサイクルは繰り返されることは容易に想像がつくのではないかと思います。

このサイクルのことを一般に地形輪廻(Geographical Cycle)というのですが、今回はざっくりとこの地形輪廻とは何かについて触れていきたいかと思います。

結論

  1. 隆起する
  2. 削られて急に
  3. もっとやられて緩やかに
  4. 最終的にまっ平

みずみずしい輪廻

輪廻とは何でしょうか。よく分からないのでコトバンクで調べましょう。

  1. 《〈梵〉saṃsāraの訳。流れる意》仏語。生ある者が迷妄に満ちた生死を絶え間なく繰り返すこと。三界・六道に生まれ変わり、死に変わりすること。インドにおいて業ごうの思想と一体となって発達した考え。流転。転生。輪転。「六道に輪廻する」
  2. 連歌・連句で、一巻ひとまきのうちに同意・同想の言葉や意味が繰り返されること。また、付句に打ち越しと似た語句・趣向を用いること。禁制とされる。
  3. 地学現象が一定の順序で生起し、循環的に繰り返すこと。浸食輪廻など。
  4. 執着の気持ちの強いこと。愛着。

輪廻」デジタル大辞泉より。

一般的な輪廻というものの定義を調べたかっただけなのですが、「地学現象が一定の順序で生起し、循環的に繰り返すこと」というどストライクな定義が出てきました。ちょっと困ってしまっているのですが、要するに繰り返すという意味です。

これをもとに「地形輪廻」という用語を考えてみると、「地形が繰り返すこと」と考えることが出来るのではないかと思います。前文である程度答えは言ってしまっている気がするのですが、特定の場所がしゃぶしゃぶのお肉の上の方のように、何度も水の上と水の下をくぐることで地形の形成が繰り返されるということが考えられます。というわけでどのような変化が行われるのかを見ていきましょう。

急になって緩やかに

基本的に水の下にある時は堆積が行われることによって地層が形成されることが多いです。この堆積では基本的に水平に、そしてある程度の距離スケールで連続して積もるといったものが見られます。このことは初原地層水平堆積の法則と地層の側方連続の法則と呼ばれており、層序学の根幹をなすものとなっているといえるでしょう。このように形成された地層が何らかの理由、例えば海水面の後退や火山活動などに起因する隆起が発生すると、当然ながら水の下にあったその地層は水の上へと引きずり出されることになります。

こうなれば当然ながら雨風はもちろん河川によってその地は侵食を受けることとなります。雨風の侵食はどこでも平等に行われる…ということはなく、ちょっとした差で強く侵食が行われるところが出てきます。これがしばらく行われるとV字谷に代表されるかなり急な侵食が行われた河川が出てきます。もちろんそれ以外のところも侵食を一切受けていないことは無いのですが、河川の侵食の力が大きいので急な地形が形成されます。

しかしここから時間が(かなり)経ってくると河川の角度がどんどん緩くなっていき、河川の侵食の強さが弱くなってしまいます。こうなると河川以外の場所と河川そのものの侵食の強さに差が生まれなくなってしまうことから「山が丸く」なっていくと考えられます。

さらにこれが進んでいくと削る力も削る山ももはやほとんどなくなってしまい、わずかに凸凹した「準平原」と呼ばれるものが形成されると言えます。

これが一般的に言われる地形輪廻の一巡です。輪廻ということで当然ながら「戻る」過程が必要になると考える方もいらっしゃると思うのでこれを少しフォローしておくと、海水面の上昇であったり火山活動などによる沈降であったりするものによって再び水の下に戻るイベントがあります。このようなイベントが発生したのならば、一番最初の隆起の前の状態になりますので、当然ながら再び「堆積→隆起→侵食→沈降」の流れに入る可能性があると言えるでしょう。

ちなみにこの地形輪廻のことを「侵食輪廻」と表現することも多々あるのですが、これは堆積輪廻とは異なります。どのように異なるかについては堆積輪廻の記事である程度詳しく書かせていただいたので、興味があればご覧ください。

色々な輪廻

さてここまで解説してきた「地形輪廻」というのは典型的な一つのパターンにすぎません。読めばすぐに分かるとは思いますが、明らかに河川がある前提ですよね。しかしながらこの地球には河川が見られない場所もあります。また侵食の話で詳しく扱うとは思いますが、水以外のものも侵食作用を生み出すことが多々あります。例えば氷や(石灰岩で出来ている場所に対する)二酸化炭素といったものです。

そのため「乾燥輪廻」であったり「カルスト輪廻」であったりといった用語があります。私はもう眠いのでこの記事では深堀りはしないのですが、興味があれば調べてもいいかもしれません。地形輪廻が面白いと思える方だったらば十分面白い内容であると思っています。

関連リンク

参考文献

  • 岡義記「侵食輪廻説の歴史と日本の地形学への影響」『地理学評論』第63巻2号、1990年、55-73ページ、国立国会図書館書誌ID: 3646371、ISSN: 2185-1735、NAID: 110000521324、DOI: 10.4157/grj1984a.63.2_55

最後に

次回のざっくりわかる堆積システムシリーズ: 侵食・運搬・堆積

堆積輪廻がすぐ終わるかと思って後回しにしていたら割とギリギリのタイミングでの執筆になってしまい焦ってしまいました。あと「サイクルは繰り返される」という文章、自明すぎると自分でも思っているので突っ込まないでくれると嬉しいです。

Writer

Osumi Akari