形あるものもいつかは崩れる風化作用

目にすることは少ないけど理解は難しくない / 2022-10-02T00:00:00.000Z

「風化」と聞いてどのようなことを思い浮かべますか。一般的には社会に対してどれだけ大きな衝撃を与えた事件でも、時が経つにつれてその衝撃は過去のものへとなってゆき、やがてはどうでもよくなってしまう…そういったことを意味しているような気がしています。

ところが堆積を扱う世界などにおいてこの言葉は「様々な自然の作用によって次第に岩石などが破壊されていくこと」といったことを意味します。この記事ではこういった意味での風化についてざっくり触れていこうかと思います。

結論

  1. 細かくなる
  2. 物理・化学・生物

一枚岩もn枚に

「様々な自然の作用によって次第に岩石などが破壊されていくこと」と言われて納得する人がいるとは思えないのでもう少し詳しく解説しようかと思います。前回の記事で示した通り自然界では水による地形の生成(破壊)が常に行われており、大まかな流れとしては

  1. 水が地面を削り
  2. 削ったものを運んで
  3. 削ったものを落とす

という流れです。ここにおける1番の「水が地面を削る」というパートで当たり前のように水が地面を削っていますが、実は大半の場合において前段階があります。

意外に知られていないのですが、岩石というのは程度の差こそあれ基本的に一つの塊と思って差し支えない程カッチリ固まっています。果たして水が削る時、水が岩石の塊を「よいしょ~~~~~~!」と転がしているのでしょうか。そんなことはありません。逆に「よいしょ~~~~~~!」と転がしている状況があったら見に行きたいので教えてください。

ここから一般的に水が地面を削る、すなわち侵食作用が働く前に起こる作用として「一つの塊を細かくする」というものが行われることが容易に想像出来るかと思います。これが風化作用です。この風化作用というのを概観すると物理的風化化学的風化の2種類に分けることが出来ます。また生物に起因するものを特別に生物的風化ということがあります。

色々な風化

上記のように大別しておいてすぐ書くようなことではないではない気はしていますが、前回解説した「侵食・運搬・堆積」の三作用が同時に発生しているのと同様に、物理的風化と化学的風化のどちらかが片方だけ行われているということは非常にレアケースと言えます。そのため以下では物理的風化と化学的風化の2つに分けてざっくりと紹介しますが、どちらかだけが発生していると考えないようにしていただければ幸いです。

パワー!!!

物理的風化というのは割と名前のままの風化です。物理的に岩石が破壊されることを指すのですから。しかしながらその破壊のされ方は様々なものがあります。ここでは代表的な2種類の物理的風化を見ていきたいと思います。

乾湿風化

乾燥わかめという食品があります。水を与えてしばらくすれば与える前の数倍のサイズまで膨らみ美味しく食べることが可能となります。反対にしばらく放置すれば水が抜けていき、またサイズが小さくなっていきます。

このように水が与えられると大きくなるという性質(膨湿性)というのは鉱物にもあり、特に泥岩に含まれる粘土鉱物(ナトリウムモンモリロナイトなどは体積が15倍にもなる)の膨湿性は極めて大きいものとなっています。そのため水が与えられまた乾燥するような海岸や川岸のような環境では、泥岩の内部でそれを構成する鉱物同士の距離が開いてしまうというイベントが水を与えられるごとに発生するということが考えられます。

このようにして岩石を構成する鉱物の結合度合いが弱くなりバラバラになることを乾湿風化、もしくはスレーキングと言います。砂泥互層などではそれぞれの層の内部の膨湿性に差があることから風化度合いに差が出てしまい、特定の層のみが強く侵食されることが発生します。

結晶の成長

氷を冷凍庫で作ったことのある方は分かると思いますが、入れた水よりも出来た氷の体積は増加していることが観察されます。これは有名な話ですね。

さて岩石も完全な塊ではなく大なり小なり穴がありますが、そこに水が入り気温が氷点下まで下がったらば岩石はどうなるでしょうか。穴の中で水が氷になることによって穴の中の水は大きくなろうと壁面に向かって力をかけます。特に昼は水が液体でいられるが夜は氷になってしまうような気象を持つ地域ではこの圧力をかけられることが繰り返されること(凍結融解サイクル)が発生し、たがねがハンマーに何回も打たれることで刺さっている物を割るかのように岩石をじわじわと破壊していきます。このようなことを凍結風化もしくは凍結破砕と言います。

また「たがねのような固体」というのは必ずしも氷に限りません。海水や火山ガスなどに含まれている塩(えん)もそのような固体になることがあります。そのためこれによる風化を塩類風化と言います。そのままですね。このような塩は次の3種類で岩石を破壊していきます。

  1. 結晶が析出する時に岩石を圧迫する
  2. 水和物となる時に膨らむ
  3. 発熱反応に伴う膨張

詳しい説明は省きますが、いずれも反応そのものは化学的な面があったとしても岩石を物理的に壊しているので物理的風化に分類されることは忘れないでいただけると幸いです。

追記: 塩類風化によって作り出される地形である「タフォニ」について解説する記事を書きました。もしよろしければお読みいただけると幸いです。

ケミストリー!!!

化学的風化も割と名前のままの風化作用です。化学的な作用によって風化が行われるものですね。ここでは代表的な2種類の化学的風化を見ていきたいと思います。

酸化還元

空気中には酸素が大量に存在しますが、その酸素が岩石を構成する鉱物と結びつくこと、もしくはその酸素が何らかの理由によって奪われることは当然ながら多発しています。こうしたことによって岩石の内部の結びつきが変化することによって岩石の破壊が進んでいきます。

溶解

酸性雨というものを皆さん一度は聞いたことがあるかと思います。雨に二酸化炭素や硫黄酸化物などの酸性の物質が溶け込むことによって、特に石灰石を用いた彫像や建築物に影響を及ぼしているといったものです。

こういった溶解による風化は鉱物の構成によって異なっており、その鉱物の陽イオンと空気中の酸素との結合度合いで大まかな評価を行うことが出来ます。これを考えると火成岩についてはマグマの結晶分化作用における析出順序と似たような形で風化の受けやすさが変化すると言えます。すなわち橄欖岩などは風化されやすく、反対に石英ばかりのものは風化されにくいと言えます。

生物的風化

風化には生物が関わっていることがあります。しかしながらそれらは物理的風化と化学的風化にカテゴライズすることが可能であるので、特に生物によるものと強調したい場合を除いて正式に用いられることはあまり多くありません。一応存在自体は示しておきますが、あまり用いられないということをきちんと理解していただきたいです。

参考文献

  • 松倉公憲「地形学」朝倉書店、東京、2021年9月1日。ISBN 978-4-254-16077-2。 NCID BC09567566。OCLC 1268511660。国立国会図書館書誌ID:031624974 全国書誌番号:23586669。
  • 松岡憲知、藁谷哲也、若狭幸「岩石の物理的風化」『地学雑誌』第126巻3号、2017年、369-405ページ、ISSN: 1884-0884、NAID: 130005893382、DOI: 10.5026/jgeography.126.369

関連リンク

最後に

最初の段落のしんみりさと次の段落との落差が激しすぎるのではないかという内部からの指摘があった気がしますが、取り敢えず書いてみました。

Writer

Osumi Akari