前回の侵食作用の記事では侵食作用一般を扱わせていただきましたが、今回は特に河川の上流部で「削られるための砂」がどのようにして作り出されるのかについてざっくり説明していこうかと思います。
結論
- 土砂が河川に至るまで
- 小規模に侵食されたり物理的に動いたり
河川まで土砂を持っていく
ある意味当然なのですが、河川が磨食する際は作用を受ける物が河川に接している必要があります。侵食作用は電磁気力や重力のように遠く離れていても働くものではないので、どれだけ侵食作用を受けそうな土砂があったとしてもそれが河川に直に触れていない限り侵食作用を受けることはありません。
このような例が全く存在しないとは言いませんが、もし河川に対して周りから何らかの方法で一切の土砂が供給されなかった場合、上記の画像のようにひたすら同じところを侵食し続けて極めて深い河谷(峡谷・ゴルジュ)を形成します。しかしながら現実にはここまで極端なものはありません。大半の河川では「V字谷」と呼ばれるようなある程度角度の付いた河谷が作り出される他、谷と谷の間にある河間地(interfluve)から様々な土砂の供給を受けたりします。そうすることで極端に直角に近しい河谷が生成されることはあまり多くないと言えます。というわけで前置きが長くなりましたが、今回は後者の土砂の供給について触れていきます。
土砂の供給
風化作用というのも侵食の下準備と言えますが、河川までやってくる土砂を生み出すこと、すなわち土砂生産(sediment production)というのも上記の通り侵食の下準備と言えます。この記事では代表的な2つを見ていこうかと思います。
ガリ
次回説明する「ガリ」と呼ばれる小規模な水流があります。これは特定の場所で発達するというよりもどんなところでも自然に発生しうるいわば「河川の赤ちゃん」と呼べる溝です。日本語で雨裂というように、降雨によって知票へ降り注いだ水が重力に従って集まり、流れ出したものです。以前風化と絡めて説明した「リル」がもう少し大きくなったものとも捉えられます。
当然小規模ながら侵食・運搬・堆積といった河川の三作用がガリの内部で発生します。またガリはその終着点に河川があることが多く、明確に合流しなくともガリが削った土砂がその終着点の周辺に堆積するという現象が起こるので、河川が削る土砂を供給していると言えます。
マスムーブメント
またマスムーブメント(mass movement)という現象で河川へ土砂が供給されることがままあります。いかにも難しそうな用語が出てきましたが、地学用語によくある見掛け倒しの単語で、要するに斜面に存在する物質が重力の力に従ってより下方へと移動することを指します。すなわち地すべりや土石流による土砂の移動のことです。
ここにおいても土砂が河川に近づいていることから、土砂を供給していると言えます。
参考文献
- 谷勲「土砂の生産と移動」『水利科学』第17巻5号、1973年12月1日、22-48ページ、ISSN: 2432-4671、NAID: 130007866065、DOI: 10.20820/suirikagaku.17.5_22。
- 松倉公憲「地形学」朝倉書店、東京、2021年9月1日。ISBN 978-4-254-16077-2。 NCID BC09567566。OCLC 1268511660。国立国会図書館書誌ID:031624974 全国書誌番号:23586669。
最後に
前回の侵食作用について説明した記事の執筆に疲れたので楽な記事を書きたかったので書きました。玉ねぎ状風化よりは書くことあったかな…といった感じですがどうでしょうか。