河岸段丘について解説した記事やV字谷に対して解説した記事において私は「側刻」というワードを紹介させていただきました。その記事が書き終わってから気づいたのですが、侵食作用全般について解説したことはあるものの、その中で「側刻」についてはあまり触れられていませんでした。侵食作用としては河床を下に向かって掘り下げる「下刻」は有名でかつ分かりやすいので触れられていたのですが、側刻まで目を向けられていなかったと言えます。
というわけでこの記事ではこの「側刻」、もしくは「側方侵食」についてざっくりと触れていこうかと思います。
結論
- 河岸を削る
- 河川を曲げる
側刻と側方侵食
ここまでの文章で見出しを除く「側刻」というワードを5回、「側方侵食」というワードを2回(多分)使わせていただきましたがこの2つの用語に違いはなく全く同じものを指しています。この2つの指しているものは「河岸を横に侵食する作用」です。
極めて概念的な図ですが、これは下流から見た理想的な河川の断面と侵食作用のかかる方向を示した図です。磨食といった物理的侵食作用は、河川の流れによる衝撃と圧力がかかる場所で起こるといえます。侵食作用というとどうしてもV字谷などを形成する下への侵食作用(下刻)を意識しがちですが、この図をよく見てみると河床だけではなく河岸に対しても侵食作用がかかっています。この河岸に対してかかっている侵食作用のことを「側刻」もしくは「側方侵食」といいます。
なおこの図のように実際の侵食作用は斜め向きにかかっていることが多く、純粋に「下方向・横方向」と分類することは難しいといえます。しかしながら「下方向・横方向」と分離することで議論を単純化し地形の形成や河川そのものの成長を考える場合に便利であることが多いことから、
- 下刻: 河床を下に侵食する作用
- 側刻: 河岸を横に侵食する作用
というように侵食作用を分けることがあります。
削る・曲げる
こうした側刻は当然ながら河川の形状を変化させていきます。
まず初めに河川の幅を広くするという面から見てみましょう。基本的に水路は同じ断面積でも深さが深いほどその流れが速くなるといった傾向があります。これは流体力学的に見て流れに対する河床の抵抗が大きいことに由来しており、河床に遠い部分が多いほど(流れの速度にマイナスの影響を与える部分が少ないほど)流速は速くなります。しかしながら側刻によって河岸が後退していくと当然水の量は急速に変化するわけではないので少しずつ河川の深さが浅くなっていきます。侵食作用は河川の流れによる衝撃と圧力に由来しておりますので、流速が減少すると侵食作用の力が弱まることになり、河川の三作用のうち運搬・堆積作用が卓越するため地形が斜面を緩める方向に近づいたり、谷底低地が生成されるようになったりするといった影響があります。
また河川が湾曲している場合にはその湾曲を成長させるといった効果もあります。なぜ河川が曲がり始めるかという理由についてはあまり明確になってはいませんが、実際の現象として自然の河川は完全に真っすぐに流れるのではなく湾曲しながら流れています。こうした湾曲している河川、蛇行河川においては側刻が極めてその成長に極めて重要な役割を持っています。
蛇行河川は大きく分けて「穿入蛇行」と「自由蛇行」の2つに分かれるのですが、このどちらにおいても上の図で示させていただいた通り、河岸を削る侵食作用が曲がっている向きの外側に強くかかると考えられています。すなわち側刻のバランスが崩れており、外側はより侵食されることによって河道は外側へと向かい移動していきます。この時において河道の内側の河岸のことを「滑走斜面」、外側の斜面のことを「攻撃斜面」と呼び、一般的に攻撃斜面の方が急な斜面になることが多いです。
関連リンク
- 「曲がった川の内側と外側の違い」NHK for School。
最後に
次回のざっくりわかる堆積システムシリーズ: 氷河が大地を削る氷食作用
侵食作用全般について解説した記事を見直したら側方侵食について書いてないことに気づいてしまったので書きました。深夜4時に書いているので大変に眠いです。