化学的に侵食する溶食作用

文字通り地面を溶かしてしまう作用 / 2022-10-24T00:00:00.000Z

このサイトの「ざっくりわかる堆積システムシリーズ」のカテゴリ「zsedimentarysys」をご覧になったことのある方は分かるかもしれませんが、私はこれまで侵食作用を河川によるものと氷河によるものとの2つに分けて紹介してきました。しかしながら侵食作用はこれらだけではありません。この記事では侵食作用として知られるものの中であまり直感的ではないのですが、場所によっては極めて大きな影響を与えている「溶食作用」についてざっくりと説明していきたいかと思います。

結論

  1. 化学的に溶かす
  2. 侵食を受ける土地の地質が強い影響

化学的に

侵食作用の前段階として、カッチカチに固まっている岩石がバラバラになってしまうといった「風化作用」というものが存在します。この風化作用にはいくつか種類があり、

  • 物理的風化
  • 化学的風化
  • (生物的風化)

の大きく分けて3種類が存在します。物理的風化というのは文字通り物理的に岩石がバラバラになる作用です。では化学的風化とはどのような作用なのでしょうか。

化学的風化とは何らかの化学的反応によって発生する岩石がバラバラになる作用のことです。化学的反応と一口に言っても様々なものが当然ながら存在しますが、有名なものとして酸化還元反応であったり、溶解反応であったりといったものがあります。今回紹介する「溶食作用」というのはこのうちの溶解反応に強い関係性のあるものです。というよりも化学的風化と化学的侵食はほぼ同時に起こることが多く、明確に分離することが難しいといった方が実態に近いといえるでしょう。

溶かす

溶解反応というのは、簡単に言えば塩化ナトリウムが水に溶けるのとほぼ同じような反応です。さて、もし塩化ナトリウムで出来ている岩盤が存在するとして、そこに水が継続して流れている場合その岩盤はどのように変化するでしょうか。もちろん水が物理的に岩盤を削るという側面もあり、それによる侵食も当然ながら起こります。しかしながら塩化ナトリウムが水に溶けることによる侵食、目に見える形では川幅・川底の拡大として見られるもの、というのも無視できません。これら侵食のうち前者のものは物理的侵食、後者のものは化学的侵食の溶食にあたるものです。

ここの「塩化ナトリウム」と「水」というのはそれぞれ「溶質」と「溶液」と一般に呼び表わすことが可能で、様々な溶質と溶液の関係が存在します。というわけで現実世界で行われているこういった溶食の中で有名なものを2つ挙げさせていただこうかと思います。

石灰岩

溶食の中で最も有名だと思われている石灰岩に対するものを一番初めに紹介させていただこうかと思います。石灰岩という岩石が世の中に存在しており、多くの方はその名前くらいは聞いたことがあるかと思います。具体的にはどのような岩石なのでしょうか。

石灰岩というものの主成分は炭酸カルシウムです。この炭酸カルシウムはサンゴに由来しており、海底で成長したサンゴ・そしてその死骸が積み重なって形成されたサンゴ礁が地上に上がることによって石灰岩が作り出されます。

炭酸カルシウムの化学式はCaCO3となっています。またこの世界には水(H2O)と二酸化炭素(CO2)が存在しています。当然ながら炭酸カルシウムから出来ている石灰岩に水と二酸化炭素が触れることが発生するのですが、その際に以下のような反応が起こることがあります。

CaCO3 + H2O + CO2 -> Ca(HCO3)2

このようにして形成されたCa(HCO3)2、すなわち炭酸水素カルシウムは水に大変溶けやすい性質を持っているため、もしこの反応が起こっている場合そこに存在した炭酸カルシウムは炭酸水素ナトリウムとして持っていかれるといえ、元あった場所ではないところに持っていかれているとみることも出来ます。

このようにして進んでいくのが石灰岩の溶食です。基本的には継続して水が供給されたり二酸化炭素の濃度が高かったりすることによって進行速度が上がると考えることが出来ます。

ラトソル

熱帯には「ラトソル」と呼ばれる成帯土壌が広がっています。ラトソルはラテン語で「レンガ」を意味する語が語源になっているといわれ、赤茶色という特徴的な色をしていることが多い土壌です。

熱帯というのは基本的に日射が安定して強く、また基本的には降雨が激しいといった傾向があります。そのため植物から生まれた土はすぐに分解されてしまうため栄養源に富んだ腐葉土の量が少ないという特徴があります。さらには高温かつ降雨が激しいため、化学的風化が激しく起こり水に溶けやすい成分が溶け出しに溶け出すといった現象が起こります。

こうして起こるラトソルが形成される溶食はどちらかといえば風化に近しいのですが、取り敢えずここで紹介してみました。

関連リンク

  • 天田高白、岡谷直「化学的風化指数に関する一考察」『砂防学会誌』第42巻4号、1989年、3-11ページ、NAID: 130004295393、DOI: 10.11475/sabo1973.42.4_3

最後に

基本的に石灰岩がメインの話であるので、ラトソルとかで書けることが少ないという悩み。またこれによって侵食されたものは「溶流」という特徴的な運搬作用を受けて運ばれていきます。刺さる人には刺さる話だと思うので、もしよろしければご覧ください。

Writer

Osumi Akari