石灰岩地域に出来る穴ぼこ「ドリーネ」

スロベニア語で「谷」 / 2022-11-02T00:00:00.000Z

以前石灰岩がある地域では溶食が発生するということを書かせていただきました。その溶食によって生み出される特徴的な地形は多数あり、まとめて「カルスト地形」と呼ばれます。今回はそのようなカルスト地形のうち、「ドリーネ」と呼ばれる穴ぼこについてざっくりと説明していこうかと思います。

結論

  1. 溶けて出来る「穴」
  2. 色々なところに出来て地面はボッコボコに

溶けて出来る

溶食というのは文字通り「溶かす侵食」です。地表からゆっくり溶かされることもあれば、地中の方が先に溶かされてスッカスカになることもあります。その結果特に溶かされてしまった場所や、スッカスカになった地面が落盤した場所においては穴が形成されます。これが「ドリーネ」です。

どちらも溶食を原因とはしていますが、前者のものを「溶食ドリーネ(solution doline)」、後者のものを「崩落ドリーネ(collapse doline)」といいます。溶食ドリーネにおいては穴の入り口よりも穴の中心部に近づくほど壁面の壁が急になっていき、穴の中心で0になるといった特徴がありますが、反対に崩落ドリーネでは形成時は非常に壁面が急であり時間が経てば経つほどに傾斜が緩くなっていくといった特徴があります。

以上のような形成原理上、溶食を受けるような地質を持つ場所において、水が溜まっていくようなわずかな凹凸がある場所であったり、地中にしみこむための亀裂などが見られる場所において盛んに形成されます。つまり溶食を受けるような場所では割とどこでも形成されます。例えば日本最大級のカルスト台地である秋吉台には500個以上といわれるドリーネが見られ、展望台から見渡すと地面がボッコボコになっています。こうしたドリーネの底には「シンクホール(en: sink hole)」と呼ばれる地中へと水を導く小さな穴が開いていることが多く、地中の溶食を助ける要素となっているとともにカルスト台地上では大きな河川が形成されない傾向も助ける要素となっています。

大きくなると

イナダという魚が存在します。この魚の名前は成長するとブリという風に変化します。このように人間からの呼称がサイズによって変化する魚のことを出世魚というのですが、似たようなものはドリーネにも存在します。

ドリーネというものがある程度成長すると、近隣にある他のドリーネとくっついてしまいます。こうしていくつかのドリーネがくっついて形成されるより大きな穴のことを「ウバーレ」といいます。

また、より大きく10kmオーダーに達するものは「ポリエ」と呼ばれます。ポリエはウバーレがさらに成長したものと捉えられがちですが、必ずしもそうとは限らないことに注意が必要です。ポリエの底にあたる部分においては、地中へと水を導くシンクホールがあるドリーネとは対照的に地表を水が流れています。そのため容易に水源を得られることからカルスト地域にしては農業が発展しやすい傾向にあります。またポリエの端っこでは再度地中へと水が戻っていくのですが、増水が発生した場合にはその処理能力を超えることがあるため、湖のようなものが短期間生成されることもあります。

参考文献

  • 松倉公憲「地形学」朝倉書店、東京、2021年9月1日。ISBN 978-4-254-16077-2。 NCID BC09567566。OCLC 1268511660。国立国会図書館書誌ID:031624974 全国書誌番号:23586669。

最後に

前回のざっくりわかる堆積システムシリーズ: 「カルスト」は何者なのか

ドリーネというのはスロベニア語で「谷」を意味する複数形「doline」から来ているものです。しかしながらdolineが英語に単数形として取り込まれた結果、英語におけるドリーネの複数形は「dolines」となっているらしいです。個人的には好き。

Writer

Osumi Akari