溶解したものが運搬される「溶流」

水に溶けていても運搬作用 / 2022-11-23T00:00:00.000Z

このサイトでは運搬作用の様式としてこれまで「掃流」・「浮流」を紹介させていただきました。これらのものはいわば物理的な運搬、すなわち流れが持つ力によって物理的に動かされてきたものでした。しかしながら風化作用にも侵食作用にも物理的なものと化学的なものがあるように、運搬作用にも化学的なものが存在します。

というわけで今回は「溶流(solution)」という化学的侵食に関連した運搬作用を見ていこうかと思います。

結論

  1. 溶けて運搬される
  2. 多かれ少なかれ行われている

溶ける

化学的侵食というのは、化学的風化という「何らかの化学的反応によって発生する岩石がバラバラになる作用」を受けたことによって起こる侵食のことを指し、侵食された後は基本的に水へとその侵食されたものは溶解します。そしてこの作用によって運ばれます。すなわちこれらは一体的に見るべきもので、めちゃくちゃ簡単に言えば水に溶ける物が流れの近くにあった場合それが溶媒へ溶け、それがその流れに沿って運搬されるということです。溶流はこの「流れにそって運搬される」部分のことを指す言葉です。

もちろんこの作用は河川として流れている河床においても発生するものですが、河川に集水域内の水が至る前において発生する傾向が強くあります。流れに沿って運搬とはいったものの物理的な運搬作用のようにパワーが必要なものではなく、継続的に流れがあればいいだけである上集水域は明らかに河床の面積より広大な場合が大半を占めるためです。そのため地下水や伏流水由来のの荷重が多いと考えられています。

ちなみに運搬されている粒子の量を考えることは、物理的な運搬作用は実際に計測すれば(その困難さを棚に上げれば)測定可能であるのに対し、溶流は難しいように感じるかもしれません。しかし二酸化ケイ素などを除いた大半の荷重は電気的な特性を持っているため、その河川の水をすくい上げて電気陰性度を測定することによって厳密な値ではない物の知ることが可能です。この方法を用いることで、例えば鍾乳洞を作る石灰岩が分布しているような地域ではカルシウムイオンの濃度を考えることで、どれほど石灰岩が風化→侵食→運搬の流れに寄与しているかを見ることが可能です。

川によって

この溶流というのは地下水による供給が多い、すなわち流れている場所によって差があることから分かる通り河川によってその様態は大きく異なるものといえます。川によってはほとんどといっていいほど溶流による運搬作用が見受けられず、反対に溶流がむしろメインとなっている河川もあるということです。そういった河川による差を示すものとして分かりやすいものは、ブラジルはマナウスの周囲で見られるアマゾン川とネグロ川の合流地点のものがあるでしょう。

Meeting of waters

日本語では「ソリモンエスの奇観」、ポルトガル語では「Encontro das Águas」というものです。上の画像の上部を流れているのがネグロ川、下部を流れているのがアマゾン川です。ネグロ川はその名前の通り植物由来の色素由来で黒く染まっているのに対し、アマゾン川は浮流として運搬している土壌由来の荷重が主に見受けられます。そのため両者はきっぱり分かれており、また合流した後のしばらくの間は混ざらずに流れ続けます。

他の面白い事例としてはセントローレンス川が挙げられるでしょう。これはアメリカとカナダにまたがる国際河川で、スペリオル湖・ミシガン湖・ヒューロン湖・エリー湖・オンタリオ湖からなる五大湖を水源としています。巨大な淡水湖群から流れ出す河川ということで、その水量は世界有数のものです。

当然ながら水源の量に見合った分だけ物理的な運搬が行われているように思えるかもしれません。しかしながら五大湖の底へ砕屑物が沈降しまくるおかげで水中には砕屑物が残っておらず、上流から砕屑物が供給されないといった珍しい状況となっています。それがために河川中で運搬されているものの割合において、水が流れているだけで供給されうる溶流のものが非常に大きくなっており、場所によっては90%を超えるといわれています。

参考文献

  • 松倉公憲「地形学」朝倉書店、東京、2021年9月1日。ISBN 978-4-254-16077-2。 NCID BC09567566。OCLC 1268511660。国立国会図書館書誌ID:031624974 全国書誌番号:23586669。

最後に

こんな記事を参照する方にとって明らかすぎることだと思いますが、溶岩流とは異なるものです。名前の響きはめちゃくちゃ似ていますよね。上で示させていただいた通りドロドロしたものが流れているわけでは無いことに注意してください。

また完全にどうでもいいのですが、「ようりゅう」と入れてIMEの変換候補が「楊柳」や「楊柳の風になびく」となっていた人も多いかもしれません。楊柳という固い言葉を避けて「柳に風」ということもある言葉で、意味としては「下手に逆らわずに対処すること」というものがあります。溶流というのもある意味下手に逆らわず水に溶けて運ばれるということなので、ちょっとした共通点があるように感じることも出来なくはないかもしれません。

Writer

Osumi Akari