運搬される砕屑物の量と河川の流量はリンクする?

同一線上にはないけどヒステリシスループ / 2022-11-25T00:00:00.000Z

この記事のタイトルとなっている疑問について、「当たり前ではないか」と思う方がいても不思議ではありません。運搬作用を考えた際に、運ばれる砕屑物は流体によって押されるようにして動かされることから、流量とリンクするのは当たり前のように感じるのはよく理解できます。

しかしながら細かく見ていくと一致しないこともあります。今回はこの私が勝手に立ち上げた疑問についてざっくりと見ていきたいかと思います。

結論

  1. 完全には一致しない
  2. ヒステリシス

荷重と流量

荷重(load)というのは要するに運搬されている砕屑物のことを指す用語です。また流量というのは文字通り(主に河川の)流れている流体の量のことを指す言葉です。前文で書かせていただいた通りこの2つの概念に正の関連はあるのでしょうか。答えから言えば、イエスでありノーであるといったものが正直なものと言えるでしょう。どこが正直だろうかと思う人がどう考えても存在するので、さらに詳しく説明していこうかと思います。

多くの場合において濁度計をぶら下げておくだけで大まかな値が分かる上、流れの中でほぼ均等に散らばっていると仮定することで大きな問題が発生することの少ない、浮流によって運搬されている砕屑物という極めて都合のいい存在が見られます。これを世の中の人類が観測することによって流れの中の荷重の量について考えることが可能となっています。また水量というのは水量計をぶっさしておけば極めて簡単に観測することが可能です。この2つのデータを突き合わせると、当然ながら荷重と流量の関係性について何かしらの考察を行うことが不可能ではなくなります。

突き合わた両対数グラフ

結果としては浮流荷重は河川の流量をa倍したりb乗したりしたものという関係性を導き出すことが出来ます。このa倍したりb乗したりというのは河川やその環境によって変化する定数です。ここまで読めば別にそこまで複雑ではない比例関係にあると考えることも出来るでしょう。しかしこの定数に特徴的なものとして、流量が増える時と減少する時でその増減度合いが変化しているという点が挙げられます。この原因としては増水時と減水時におけるベッドマテリアルロードとウォッシュロードのバランスの変化などが考えられますが、これを考え出すと紀要論文が1本かけてしまいそうなレベルなのでここでは詳しく触れません。

しかしながら増える時と減る時にその度合いが変化していることは、グラフにしてみるとそのラインは同じ荷重の量/流量でも一致しないことがあり得るということです。bというのは指数であるため分かりづらいと思うかもしれませんが、これを両対数グラフで見ると非常に尖ったひし形のような形になります。そのため水量の増加→減少という時系列でグラフを作成していくとひし形のループが描かれることになります。このようなループが見られるような現象のことを一般に「ヒステリシス(hysteresis)」と言います。さらにややこしいことに、河川の状況は常に変化していることから常に同じbの値を取ることは稀な現象となっています。

このことから荷重の予測、ひいては侵食・堆積の進行の予測を難しくしていることがあるといえます。一応現在では先述の通り人力を排した観測がある程度できるため精度を数で補うことが出来ているのでものすごく大きな問題となっているといえないようにはなっているということを付記しておきます。

冒頭の繰り返しとなりますが、荷重と流量の関連性は確かにあるものの場合によって変化する変数が存在するため、大まかには関連性があるといえるが完全に比例のグラフが描けるほど都合のいいものではないことを最後に書かせていただき、この記事を終わらせたいと思います。

最後に

週刊誌をほとんど読まないので、無理矢理疑問を作り出して記事をクリックさせるといった技法を上手に用いることが出来なかったと思っています。つまり私は「煽りタイトル初心者」ということですね。今後も対戦よろしくお願いします。

Writer

Osumi Akari