河川の三作用と呼ばれる作用には当然ながら3つの種類があります。それは侵食作用・運搬作用・堆積作用の3つです。この最後にあたるのが堆積作用(en: sedimentataion)です。堆積作用に限らずこれらの作用は一言でまとめることは極めて簡単なものの、細かいものを見ていくと複雑なものとなっています。そのためこの記事の内容が急速に難しくなってしまう可能性があります。「ざっくりわかる」ことを心がけておりますがその点はご了承ください。
また基本的には河川におけるものを想定して執筆しておりますので、例えば海中における堆積について正確なものと放っていませんので、その点もご注意ください。
結論
- 運ばれた砕屑物が積もる作用
- 「積もって出来る」地形を作り出す
削ったものを落とす
河川の三作用について扱った記事の中で私は堆積作用のことを「削ったものを落とす力」と表現しました。運搬作用によって運ばれてきた砕屑物がただこの表現は必ずしも堆積作用の全ての側面を言い表しているものではありません。この話は難しいのですが、ある程度簡単に話を進めさせていただくために「ユールストロームダイアグラム」の話をさせていただこうかと思います。
詳しい話は運搬作用について説明させていただいた記事を参照していただきたいのですが、この図は粒径と流速の2つをもって河川の三作用を受けうる砕屑物が侵食・運搬・堆積のどれにあたるかを決定しようとするものです。運搬作用を受け始めることを「エントレインメント」というのですが、そこで詳しく「掃流力」のお話をさせていただいたかと思います。掃流力は流速に大きな影響を受けるパラメータでもあり、当然ながら堆積のされはじめにも大きな影響を持っています。すなわち堆積に限らず河川の三作用を考える上で極めて重要なものとして流速があります。
運搬されている砕屑物が堆積する要因、すなわち流速が遅くなる要因は何でしょうか。それを考えるために役に立つのが主に運搬作用の解析で用いられる「ストリームパワー」という考え方です。詳しい話はリンク先をご覧いただきたいのですが、河川の流量と河床勾配が支配的な要因と言えます。もちろん片方だけの要因が極めて重要ということではなく、どちらもそれなりに重要であると考えたほうが良いでしょう。(明確なものではありませんし正確な表現ではありませんが)ここから言えることとしては河川の流量が著しく減少すること、もしくは河床勾配が緩くなってしまうことが流速を低下させうる要因であるというものがあります。一般の河川で起こり得ることはこのうち後者の河床勾配の変化でしょう。では河床勾配の変化はなぜ起こるのでしょうか。
この説明は極めて難しく私もよく理解できていないので避けたいのですが、一般論としては元あった地形が一因となっていること、そして侵食によって勾配を急にすることが出来なくなることが挙げられます。分かりやすい事例としては下で紹介している扇状地の事例があるでしょう。
以上から堆積作用は一言で言えば「運ばれた砕屑物が積もる作用」なのですが、単純にそう見なせるかというと必ずしもそうではないということを理解していただければ幸いです。
堆積地形
ここでは主に堆積作用によって形成される代表的な地形をいくつか紹介していきたいと思います。あくまで「主に」堆積作用によるものなので、侵食作用による地形も確認していただければ幸いです。またごった煮のような形でまとめているので、地形の規模感が大きく異なるものがあることに注意してください。
扇状地
扇状地とは、その多くがV字谷を抜けた先にある平地に形成される堆積地形です。ユールストロームダイアグラムを確認すると分かりやすいかと思うのですが、運搬されている砕屑物の粒径がよほど小さくない限り、流速が遅くなると堆積作用が起こります。そのため急に平地へ出てきたりして川の勾配が緩やかになってしまうと、そこで急速に堆積が発生します。
ユールストロームダイアグラムを見ていただければ分かる通り、大きな粒径を持つものほど同じ流速において堆積が発生しやすい傾向にあります。このことから扇状地には大きな粒径を持つ砕屑物が集まる傾向にあるため、「水はけがいい」土地になりやすいと言われています。
沖積平野
沖積平野(ちゅうせきへいや)は主に河川の中流域に発達する平野のことです。主に河川の増水によって氾濫が発生した際に形成されやすいことから氾濫原と呼称されることもあります。
自然堤防
自然堤防は上記のような沖積平野の周辺に形成される相対的に高い微高地のことです。先述のストリームパワーは確かに流量と流速が支配的な要因です。しかしストリームパワーを求める上で必要なものは
- 水の密度
- 重力加速度
- 水深
- (水路の)幅
- 長さ
- 区間の高さの差
です。ここで水深に注目してみましょう。沖積平野が作り出されるような氾濫が発生した際、当然ながら砕屑物を含んだ水は水路の外に溢れ出ます。その際水深が急激に変化する、より平易な言葉で言えば浅くなることが考えられます。そうするとストリームパワーは一気に減少するといえ、単位当たりの流量が変化するとも捉えることが出来ます。
この場合は単位当たりの流量が減少しているためストリームパワーが弱まると考えられ、堆積が起こりやすくなります。そのため河川の流路の付近に微高地が形成されます。
三角州
三角州は河口の周辺に形成されることの多い堆積地形です。河川によって運搬されてきた細かい砕屑物によって作られ、一般に水はけが悪い土地と見なすことが出来ると考えられます。
ベッドフォーム
ベッドフォームは堆積作用及び流れによって生み出される微地形の総称です。ここで下手に話し始めるとこの記事が終わらなくなってしまうので、リンク先をご覧いただき概要を把握してくださると幸いです。
- 斜交層理
- トラフ型
- 平板型
- ハンモック型
- ヘリンボーン型
- カレントリップル
- デューン
- 火炎構造
- 荷重痕
- ソールマーク
- スランプ褶曲(微地形かというと微妙)
砂嘴
砂嘴(さし)というのは河口から流れ出した砂が海岸流などに運搬されて形成される、陸から飛び出しているような形状になったような地形のことを指す言葉です。砂にくちばし(嘴)という分かりやすいネーミングですね。
形状によって名称が異なることで知られています。例えばくちばしのように飛び出るようなものではなく陸地を両端で繋げているものは砂州と呼ばれます。また島と陸をつなげてしまった場合には陸繋島/陸繋砂州などと呼ばれることもあります。
海底地形
そういえば言及するのを忘れていたのですが、海底にも侵食・運搬・堆積の三作用に由来する地形が存在します。それなりに面白いと思うので、興味のある方は「海底にも地形はあるという」をご覧ください。
最後に
前回のざっくりわかる堆積システムシリーズ: 砕屑物が河床へと行く「沈降」
この記事へリンクするべき過去の記事をを探すために「堆積」というワードでこのサイト内を検索したら、58件のファイルに218個存在したとのことです。どれだけ私はこの便利なワードを用いてきたのでしょうか。ようやくこの便利ワードの解説ができそうで安心しています。
また締切駆動の生活を行ったところ、生活に必要な時間以外全てを作業に割かなければいけない事態が2日間ほど発生したため、中身がそこまで無い割に執筆に3日間もかかっています。中身の薄さは他の記事でカバーしていこうかと思いますので、是非リンクされている記事をポチポチ押していただければ幸いです。