前回の記事で示させていただいた通り、一般的に「三角州」といった際においてもその形は一定に定まりません。前回の「円弧状三角州」はあまりインパクトがありませんでしたが、今回示させていただく鳥趾状三角州はそれなりにインパクトがあるものだと思います。
というわけでざっくりと鳥趾状三角州について正月早々紹介していこうかと思います。
結論
- 鳥のつま先のような三角州
- ミシシッピ川などがよく知られている
鳥のつま先
その辺に富んでいる鳥類を捕まえて、その足をまじまじと観察したことはありますか。私はありません。しかしながら世の中にはまじまじと観察する人がいたようで、詳細な絵がインターネット上に転がっています。しかもパブリックドメインです。
さてこれらはどのような形状をしていると言えるでしょうか。どちらを上と見るかは人によるでしょうが、物が重力に引かれて落ちるのと同じように鳥の頭がある方を上と見なせば、一つの場所から複数に伸びるように線が発達するような形状をしていると言えます。そしてその形状は鳥趾状三角州と極めて近しい形をしていると言えます。
鳥趾状三角州というのは砕屑物の量が多い上、海による侵食があまり盛んではない場合に形成される三角州です。砕屑物の量が多い河川においてはその河口へ大量に砕屑物が運搬されていきます。その結果河口のすぐそばに砕屑物が堆積していき、少しつづ河川が成長していくような形になります。海流などがあればそれらは流されてしまうのですが、そのようなものの作用が弱い場合にはその成長が止まることなく成長していきます。その結果鳥の足のように長く成長していきます。またその成長の過程においていくつかに分岐することもあります。
こうしてできる鳥趾状三角州は、「三角州」という名前からイメージしづらいものだと思います。しかし三角州の出来方を考えるとこれは三角州と言わざるを得ないものです。直感的ではないと思うのも十分に理解できるのですが、三角州と分類されることが分からなかった場合は、三角州とはどのようなものであるかを再度確認して見るといいかもしれません。
例
例としてはやはりこの場所を出すしかないでしょう。
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これはアメリカ中部を流れるミシシッピ川のもので、運搬されている砕屑物は河川の長さから想像できる通りかなりの量があります。しかしながらメキシコ湾にはメキシコ湾流というそれなりに強い海流があるものの、ミシシッピ川河口付近においてはそこまで強いものとはなっていません。ちなみに「ミシシッピデルタ」という言葉があり、いかにもこの三角州のことを指しそうなのですが、一般にはそうではなくより内陸の沖積平野の地域を指します。
日本においてはここまで大きなものはありませんが、このようなものがあります。
これは網走湖に流入していく網走川のものです。湖への流入という環境から想像付くと思いますが、ここにおいては侵食が盛んではないので鳥趾状三角州が形成されています。
最後に
- 前回のざっくりわかる堆積システムシリーズ: 「三角州」から一般的にイメージされる円弧状三角州
- 次回のざっくりわかる堆積システムシリーズ: 河口が突き出している尖状三角州
鳥の足の形状をまじまじと観測したことのある人はなかなかいないと思うのですが、一回見てみれば確かにそうとしか見えないネーミングの三角州だと思っています。日本においてはあまり馴染みのないものですが、面白い形ですよね。