前回のざっくりわかる堆積システムシリーズの記事においてはあまり知名度の高くない「直線状三角州」について解説させていただきました。というわけで今回は同じように知名度のあまり高くない三角州の形状の一つである「湾入状三角州」についてざっくりと説明していこうと思います。
結論
- 島が点在する三角州
- 潮汐の力
湾入状三角州
これまで紹介してきた三角州は、そこが陸地として独立しているようなものが大半でした。しかしながら今回紹介させていただく湾入状三角州はそのようなものとは若干イメージが異なるものです。そのため湾入状三角州に限りませんが「三角州」と聞いて想像した物を一旦脇に置いた上で読み進めていただくと幸いです。
湾入状三角州は三角州の形成に関わる3つの大きな力(砕屑物・波の力・潮汐の力)の内、潮汐の力が卓越している場所に形成されることが知られている三角州です。湾入状三角州に限らず三角州は堆積作用によって形成されていますが、堆積したものは(自明ではないというのは正しいのですが)堆積した瞬間に侵食作用を受けることになります。この侵食作用の原因としては流水が主なものですが、その水が流れている理由によって受ける侵食作用の様態が変化すると言えます。
もし三角州が形成されるような場所において河床勾配が極めて緩やかである場合、潮汐のサイクルで侵食を受ける範囲及びそれに係る力は大きなものであると考えられます。そのため湾入状三角州は所々水域となってしまっているような三角州になってしまいます。そのため海が陸地に食い込んだような形になってしまいます。このような形成過程については説明が難しいため、下に挙げさせていただく実例と合わせて理解していただければ幸いです。
実例
湾入状三角州の知名度から察していただきたいなのですが、明瞭な実例として分かりやすいものはあまり個数は多くありません。しかしながら何とか探し出してきたので紹介してみようかと思います。
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パプアニューギニアを流れるフライ川の河口に見られる三角州が湾入状三角州の例として挙げられます。この河川はニューギニア島を流れる河川の中で一二を争う長さを持ちそれなりの砕屑物が運搬されてきますが、下流域において河床勾配がそこまで大きくないことから形成された三角州は潮汐の力を強く受けてしまうことになります。そのため島々が点々としている三角州が形成されます。
参考文献
- 松倉公憲「地形学」朝倉書店、東京、2021年9月1日。ISBN 978-4-254-16077-2。 NCID BC09567566。OCLC 1268511660。国立国会図書館書誌ID:031624974 全国書誌番号:23586669。
最後に
- 前回のざっくりわかる堆積システムシリーズ: 確かに真っ直ぐな直線状三角州
- 次回のざっくり分かる堆積システムシリーズ: 三角州ではなく扇状地である「ファンデルタ」
知名度が円弧状三角州・鳥趾状三角州・尖状三角州の有名な3種類の三角州と比較すればけた違いに低い三角州についてざっくり説明させていただきました。情報源を手に入れる難易度がびっくりするほど高くてびっくりしました。びっくりしたので。